◇支援の輪広がる みそ汁提供、絵本を寄付
東日本大震災で被災し深刻な事故を起こしている東京電力福島第1原発のある福島県から県内への避難住民は17日も相次ぎ、県の午後4時現在のまとめで7650人に達した。各避難所では、県内の団体や個人が食料を差し入れたり、子どもたちのために絵本を寄付するなど、支援の輪が広がっている。【塚本恒、川畑さおり】
相談所が開設され、続々と避難住民が到着している阿賀野市の旧大和小学校では、近くにある食品メーカー「ヤスダヨーグルト」が16日朝から、計約600本のヨーグルトなどを届けた。同社の佐藤卓営業部長(46)は「市に物資の提供を申し出たところ、相談所が開設されたことを聞いた。困っているときはお互いさま。他の避難所についても、要請があれば検討したい」。
また、同市建設業協会は16日の昼食からみそ汁を差し入れている。市からの要請を受け、「被災者に温かい食べ物を提供しよう」と決めた。同協会の安孫子佳弘さん(48)は「逃げてくる人々のために、少しでも役立てれば」と話した。
南相馬市小高区から一家6人で避難してきたという槙大輔さん(30)は「これまでは、おにぎりばかりだったので、子どもたちも喜んでいる」と感謝した。
避難所の一つ、新潟市中央区の市体育館には、市民から子どもたちにと絵本約20冊と折り紙、お絵かき帳などが寄付された。福島から避難してきた子どもたちは笑顔をみせながら、折り紙や絵本を手にとっていた。
五泉市の馬下保養センターの避難所では、JA新潟みらい村松特産振興協議会が、イチゴ「越後姫」60パックを避難住民136人に差し入れた。二宮紀一会長(62)は「すぐに食べられるものとして、イチゴの提供を決めた。被災者に元気を出してもらえるよう、今後も支援を続けたい」と話した。
◇「いつになったら家に…」 長岡などにも避難相次ぐ
福島からの避難者は、長岡市などの避難所にも入り始めた。避難所にたどり着いた住民らはホッと一息をつく一方、「放射能が怖くてもう家には戻れない」「将来の生活はどうなるのか」と不安の表情を浮かべた。
◆爆発に危険感じ
長岡市は約80カ所の避難所を開設し、約1万4000人を受け入れる方針。避難所の一つ、「高齢者センターみやうち」は100人を受け入れる予定。福島第2原発が立地する楢葉町から家族7人で避難してきた根本里子さん(57)は、自宅が海岸線から約500メートルの地点にあり、津波はヘドロのようになって50メートル手前まで迫ったという。
近くの小学校に逃げた後、いわき市の中学に避難。同原発の南約50キロの地点で、約1500人が避難していた。情報が断片的にしか入らず、14日に第1原発3号機が水素爆発したのを機に、避難所では「このままでは危ない」という雰囲気になり、多くの避難者が福島を離れ始めたという。
根本さん一家も、柏崎市に住む息子にガソリンを持ってきてもらい、車で避難所を出て16日夜に長岡市の避難所にたどりついた。「できれば家に戻りたいが、まだまだ時間がかかるだろう」と不安を募らせた。
◆「畳で寝られる」
第1原発が立地する双葉町の中野美恵子さん(59)は夫と避難。自宅は津波被害を免れたが、地盤が割れてもう住めないという。「ここに来て、畳の上で寝られるだけでも幸せ。着の身着のままで駆け落ちしたと思えば何とかなる」と笑ってみせたが、将来については、原発事故の影響で「もう家には戻れないと思う。先のことを考えたら泣けちゃう。でも生きていかないとね」と自分に言い聞かせるように語った。
◆防護服で逃げた
東電の下請け会社の社員で、地震発生時、定期点検中だった第1原発4号機で点検作業をしていた男性(36)は、停電で真っ暗な建物の中を、防護服のまま非常口から逃げ出した。外へ出て着替えた後、走って構内を逃げた。海を見たら、津波が来るのがわかり、事務所のある場所まで約400メートルの上り坂を必死で走った。振り向くと、波が原発付近に到達し、車が流されているのが見えた。
楢葉町の自宅は津波で流されずに残ったが、避難所で生活を続けた。原発の事故が深刻化したため、福島県を離れ、16日夜、長岡市の避難所に家族とともに入った。「とりあえず安心した。でも、落ち着くと今度は仕事やお金、ローンのことなどいろんなことを考えてしまう。いつ家に戻れるのか」と充血した目でつぶやいた。【岡村昌彦】
◇福島からの避難所、知事が視察し激励
泉田裕彦知事は17日、退避指示や屋内退避指示が出ている福島第1原発の半径20~30キロ圏内に位置する福島県南相馬市からの避難住民約270人を受け入れている三条市総合福祉センターの避難所を視察した。
泉田知事は体育館などで休んでいる避難住民に声をかけ、「皆さんが落ち着いて将来の生活のことを考えられるよう、力をお貸します」と励ました。
視察後、泉田知事は報道陣に「(避難住民は)こちらに来てほっとした様子で安心した」と印象を話した。東北へすでに多くの救援物資を送ったため、県内の在庫が少なくなっている。今後、物資の調達が課題になるが、「政府が一元に統制しており、手に入りにくくなっている」と政府への不満を示した。【小川直樹】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00000143-mailo-l15










