【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)は15日、福島第1原発の事故を踏まえ、ブリュッセルで開いた特別会合で、EU域内にあるすべての原発を対象に耐震性などを調べる安全性検査を実施することで合意した。EUは近隣諸国に参加を呼びかけており、いずれ世界各国が採用する国際標準にしたい考えだ。
検査は任意制。福島第1原発で電力供給が途絶えた結果、冷却装置が働かなくなったとみられることから、耐震性や津波に対する強度、テロ対策に加え、(1)冷却装置の機能(2)停電対策や予備電源の有無--などを調べる。EUや各国の専門家が検査の項目や基準を精査し、今年後半にも検査を実施する。
EU域内には14カ国に143基の原発があるが、原発の提供国や設計、建設・更新の条件、安全点検の頻度などは各国でばらばらだ。検査には厳格な安全基準をEU加盟国間で共通化することで、原発の信頼性を高める狙いがある。原発の危機管理は24、25日のEU首脳会議でも協議される。
エッティンガー欧州委員(エネルギー担当)は記者会見でトルコ、スイス、ロシアの名を挙げ、「友好国や近隣諸国も安全性検査を実施してほしい」と述べた。サルコジ仏大統領が主要20カ国・地域(G20)の枠組みで参加を呼びかける予定で、EUは国際原子力機関(IAEA)と協力して「世界規模での安全性検査」を提案する。
原発の安全対策はEUと加盟国の間で権限が分かれている。順守すべき安全基準のガイドラインを定めるのはEUだが、原発建設の是非を判断したり、稼働期間や更新を決めるのは加盟国だ。エッティンガー欧州委員は「安全性検査は欧州化の第一歩だ」と述べ、今後、欧州レベルで政策協調が進むとの見通しを示した。
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