地震、津波による被害に加え、福島第1原発の事故が起きた福島県から県外に避難する住民が増えている。毎日新聞が、宮城県を除く隣接県と千葉県に取材した結果、16日夕時点で山形県や新潟県を中心に5671人にのぼることが分かった。福島県は屋内退避指示区域の希望者については、県外に避難させることを16日に決定、避難する住民は今後も増加するとみられる。【関雄輔、蓬田正志、塚本恒、泉谷由梨子】
同原発の放射能漏れに関して、同県は、国から屋内退避指示が出ている同原発から20~30キロ圏内の約14万人について、希望者全員を県外へ避難させることを決めた。生活物資の調達が困難になっており、多くの住民が県外に移るとみられる。
同圏内には、住民約13万6000人と、国の避難指示が出ている原発から20キロ圏内の避難者約5000人がいる。県内他地域の避難所の受け入れが限界になり、周辺県に協力を求めている。
バスで移動し、避難所に着く前に被ばく量を調べるスクリーニングを実施し、必要があれば放射性物質を落とす「除染」も行う。県生活環境部の荒竹宏之次長は「非常に大規模な避難になるが、早急に行う」と語った。
一方、同原発がある大熊町に接している富岡町と川内村の合同の対策本部は16日朝、全住民に避難指示を出した。同町は20キロ圏内で避難指示が出ている地域。多くは隣の同村に避難していた。同村も一部が避難指示区域で、残りの大半が屋内退避区域。移動する住民は五、六千人とみられる。
猪狩貢副村長は「情勢は悪化する一方なのに、国や県の情報も入らない。住民の安全が第一」と話した。
福島県の西隣の新潟県には、16日午後5時現在で県内15カ所に避難所を開設、2674人を受け入れた。
避難所の一つ、新潟市西区の県自治研修所は、受け入れ可能人数いっぱいの150人に達した。福島県南相馬市の農業、鈴木孔明さん(32)は、妻と長男(3)、2月に生まれたばかりの次男を連れ車で来た。鈴木さんは「お風呂に入れたし、子どもを病院に連れて行くこともできた」と話す。
◇「子どもたちを守らねば」
自宅は避難指示が出ている福島第1原発の半径20キロ圏内にある。津波は自宅のすぐ近くまで迫ってきた。高台にあがって難を逃れ、いったんは隣の市内の別の場所に避難したが、原発事故が追い打ちをかけた。「子どもたちを守らなければ」と避難してきた。
特産のシイタケを栽培しており「今は菌を植え付ける時期だが、放射性物質に汚染されてもされなくても風評被害で誰も買わなくなる」と将来を案じる。
「放射能が怖い」と南相馬市の農業、末永登美子さん(67)は車9台を連ねて7家族で避難してきた。「福島では食べ物もガソリンも手に入らない」。最初2晩は車中泊し、途中でようやく給油できた。新潟の病院で血圧を下げる薬を入手できた。「復興には何十年もかかるだろうが、生き残った者として、これから一生懸命立ち直っていかなくてはいけないと思う」と話す。
栃木県にも、福島県からの避難住民が急増している。県は、那須町の宿泊施設など3カ所を一時避難所に指定。合計で500人程度を受け入れる予定だったが、定員に近付いたため急きょ、別の施設を用意した。
福島県大熊町から家族4人で避難してきた根本信一さん(63)は「津波が終わったと思ったら原発事故で、恐ろしくて家にはもういられない」と疲れ切った表情だった。
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