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迫るクマの脅威「都市型」が増加

迫るクマの脅威 街中に出没する「都市型」増加 後絶たぬ人身被害 自治体は最大警戒

クマの生息域が人間の生活空間に近づきつつある。人里周辺で暮らし、街中に出没するクマはアーバンベア(都市型クマ)と呼ばれ、近年増えている。環境省の統計では、令和6年度の人身被害は全国で78件81人(11月末時点)。過去最悪だった昨年度の193件212人(同)からは大幅に減ったが、先月には秋田市のスーパーにとどまるなど住民らの脅威となっている。近畿でも被害が出ており、対策が急がれる。

「クマが入ってきた」。京都府福知山市のレストラン従業員から110番があったのは、今年4月18日午後1時半ごろのこと。体長約1メートルのクマが隣接する倉庫に入り、駆けつけた警察官らが机などで入り口をふさいで閉じ込めた。

倉庫の出入り口に赤外線カメラを設置して夜間も監視が続いた。翌日、中を確認するとクマの姿はなく、換気口から逃げ出したとみられる。

京都府によると、令和5年度の府内でのクマの目撃件数は約900件。近年は毎年1千件弱で推移し、年間1~2件の人身被害がある。

クマの目撃情報が多い同市では、今年度からクマによる被害防止のための補助金事業を開始。クマのエサとなる柿の木の伐採や、木登りができないように巻くトタンの設置などの費用の半分を市が負担する。市の担当者は「クマが出没しないような対策も進めているが、万が一遭遇したら背中を見せないように。市や警察に連絡してほしい」と話す。

先月30日には秋田市の海沿いのスーパーにクマが侵入。男性従業員を襲い、捕獲されるまで2日間ほど店内にとどまった。

「これまでクマが出没したことはなかったが、最近は自宅のそばや通勤路で目撃が相次いでいる。出くわしたらと思うと、恐ろしい」。同市内の50代女性は不安げに話し、「高齢者など車での移動ができない人は買い出しに行くのにも困っている」とため息をつく。

秋田県でのクマの目撃件数は、平成25年の282件から令和5年には3723件に増加。今年7月には70代男性が自宅近くの広場で襲われ、顔などを負傷した。

県は出没情報を配信するシステム「クマダス」を提供。電気柵を設置し、家の周りの草を刈って見通しをよくするなどのクマを近づかせない環境整備を促す。令和2年には「ツキノワグマ被害対策支援センター」を開設。専門知識のある職員が休日でも電話相談を受け付け、クマ対策の出前講座も開催している。

■生息分布拡大、人との距離に狂い

人里への警戒心が薄いアーバンベア。環境省によると、令和5年度のクマの出没情報は2万4345件で4年度の倍以上に増加、過去15年間で最多の219人がクマに襲われ負傷し、うち6人が命を奪われた。今年度も出没情報は10月までに1万7988件(速報値)に上り、前年度の7割に達している。

人が生活圏でクマに襲われるケースも多発。令和5年度のツキノワグマによる人身被害の発生場所は4月はすべて森林だったが、冬眠直前の11月は約6割、12月も約3割が民家周辺だった。

酪農学園大学(北海道)の佐藤喜和教授(野生動物生態学)は、周期的に発生する木の実の凶作が各地で重なったことが要因だと指摘。人口減少による耕作放棄地の増加でクマの生息分布が拡大しているとみている。

元来クマは臆病で、人間には近づきたくない性質がある。手入れされた田畑はクマにとって居住空間の森林とは異なる景観で警戒心があり、距離が保たれてきた。

しかし、高齢化や後継者不足などにより農家の数が減少。放置された田畑がクマの生息する藪(やぶ)や林となり、生息しやすい環境に変化した。実際、荒廃農地は平成25年は9530ヘクタールだったのに対し令和5年は1万4400ヘクタールまでに広がっている。 国は手つかずとなった農地の再生を進めているが、山間の農地ほど再生されないまま放置されている場合が多いという。佐藤さんは「人間の居住環境が狭まることは野生動物の生息域が広がることと同義」とクマの行動範囲が広がっている可能性を指摘。「生活圏周辺に定着するクマを減らし、クマの居住エリアを森林側に戻す対策をとることが求められる」と話した。(鈴木文也)


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