闇バイトの求人巧妙化、SNS投稿見分けつかず…「電話受付のお仕事」「学生可能、全国対応」
若者を「闇バイト」に誘い込むSNSの投稿が、一般の求人と見分けがつかない文面に変化している。以前は犯罪を示唆する「隠語」が使われることが多かったが、気付かないうちに犯罪に加担するリスクが高まっている。若者に怪しい投稿の見抜き方を学んでもらう取り組みが始まった。(北島美穂)
気付いた時は…
SNSでの闇バイト「求人」の投稿例
<初心者大歓迎 電話受付のお仕事です><学生可能☆全国対応>。いずれもSNSに投稿されている闇バイトの求人でよくみられる文言だ。一般の求人の投稿とほぼ変わらない。
若者が闇バイトに加担するまでの流れ
若者のネット利用の実態に詳しい兵庫県立大の竹内和雄教授(生徒指導論)によると、SNSを使った闇バイトの募集は、数年前まで「タタキ」(=強盗)などの隠語を使う内容が主流だった。応じる側も、何らかの犯罪だと認識ができた。
しかし、昨年発覚した「ルフィ」と名乗る指示役らによる広域強盗事件で、闇バイトが社会問題化。実行役の募集にSNSが悪用されていることが知られ、文面が変化しているという。
竹内教授は「闇バイトと思わずに応募し、そのまま断れなくなるリスクが高まっている」と指摘する。
非行少年の更生を支援する名古屋市のNPO法人「 陽和(ひより)」によると、同市内の17歳の少年は今年、X(旧ツイッター)で求人の投稿を見つけ、アルバイトと思って応募した。すると、特殊詐欺の「受け子」をするよう指示され、高齢者からキャッシュカードをだまし取り、逮捕されたという。
途中で犯罪と気付いたが、犯人グループにマイナンバーカードを撮影した画像を送っており、やめられなかった。少年は現在、少年院に収容されているという。
同法人の渋谷幸靖理事長は「少年は『誰かに相談できていたらよかった』と後悔している。知識がなく目先の利益につられやすい少年をだまし、犯罪に加担させるのは悪質だ」と憤る。
クイズで啓発
求人情報サイト「バイトル」を運営する「ディップ」(東京)は昨年12月、全国の高校生250人を対象に、闇バイトの求人を見抜くことができるかどうかクイズ形式で調査した。
<DM(ダイレクトメッセージ)にて応募された方のみ!><段ボールを運ぶだけ>などと連絡方法がDMだったり、仕事内容が不明確だったりする投稿は闇バイトの可能性が高いが、8割が見抜けなかったという。
こうした状況を受け、同社は今年2月から、見抜き方を学んでもらう出前授業を全国の高校で実施している。4月には大阪府立東住吉総合高で行われ、参加した2年生(16)は「高時給などの文言や、DMで連絡を取り合うバイトの募集は避けようと思う」と話した。
同社の担当者は「バイトの経験が乏しい若者は、不審な募集に気づきにくい。正しい見分け方を伝えていく必要がある」と強調する。
求人サイト運営会社「タイミー」(東京)も昨年4月から、アプリに闇バイトの啓発記事を掲載。東京都も特設サイトを設け、今年6月からはディップと協力し、闇バイトでよくある募集の文言を紹介している。
「受け子」半数SNS経由
警察庁によると、特殊詐欺事件の「受け子」などで昨年1~7月に逮捕・書類送検された容疑者1079人のうち、SNSで「闇バイト」に応募していた容疑者が半数近い506人に上った。特に20~30歳代が目立ったという。
警察庁は昨年9月から、ネット上の違法情報などの削除をサイト管理者に要請する委託事業の対象に、すべての闇バイト募集の投稿を追加した。各地の警察本部もSNSの監視強化を強めている。