[ カテゴリー:医療 ]

劇症型溶連菌 昨年の患者数に迫る

 【感染症ニュース】劇症型溶血性レンサ球菌感染症の今年の患者数が900人超え 約5か月で2023年の患者数に迫る勢い! 医師「7月頃までの溶連菌感染症流行に注意」

国立感染症研究所の2024年第21週(5/20-26)速報データによると、劇症型溶血性連鎖球菌感染症の報告数は30。今年の累積報告数は935となりました。去年1年間の患者報告数は941で、およそ5か月で去年の報告数とほぼ同じ患者が発生しています。致死率がおよそ30%という注意すべき感染症の流行に警戒が必要です。


◆劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は「人食いバクテリア」とも呼ばれることもある感染症です。A群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病する例があります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されています。

◆感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、
「よく『人食いバクテリア』といわれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症ですが、原因となるA群溶血性レンサ球菌に注目していただきたいと思います。この菌はA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の原因菌でもあり、溶連菌感染症は現在過去最大の流行が続いています。そのためA群溶血性レンサ球菌に接する機会が増えていることから、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を発症する人が増えていると考えられます。溶連菌感染症の流行がおさまるまで、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者も増え続けるのではないかと予測しています」と語っています。

◆感染経路を特定するのが難しい劇症型溶血性レンサ球菌感染症
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、通常は菌が存在しない血液、脳脊髄液、胸水、腹水、生検組織、手術創などからレンサ球菌が検出されます。傷口や皮膚の疾患などから菌が侵入するケースが考えられますが、はっきりとした原因はよくわからないことが多いとされています。また、妊婦が出産時に産道から感染する場合もあります。
安井医師は「当院でも2024年、出産時にレンサ球菌に感染したとみられる方がいました。劇症型なので発病から病状の進行が急激で、直ちに治療を行う必要がありました。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は予防が難しく、治療に急を要するので、こうした感染症の理解を深め、もしものときに備えていただきたいと思います」としています。

◆A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は去年のピーク時とほぼ同じ流行に
一方、感染症研究所の2024年第21週(5/20-26)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点当たり報告数は5.03。今年に入り最多の報告数で、去年のピーク5.04(2023年第50週、11/11-17)とほぼ同じ流行規模になっています。都道府県別では鳥取12.68、山形11.54、北海道9.35、福岡8.81、新潟8.20、宮崎7.67、千葉6.82、茨城6.81が多く、流行は全国的に広がっています。
安井医師は「溶連菌感染症は去年の秋以来流行が続いています。子どもたちの間で感染が広がる感染症ですので、例年夏休みが始まるまでは流行が続くので、2024年も7月頃まで患者数は多いままで推移するのではないかと予測しています。家族間での感染もありますので、予防に留意していただきたいと思います」としています。

◆A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。よく見られる疾患としては、急性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱(しょうこうねつ)があります。また菌の直接の作用ではないのですが、合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症、あるいはリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあります。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。


引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第21週(5/20-26)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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