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青魚で花粉症対策 花粉症の症状を抑制する成分を発見

 青魚で花粉症対策 花粉症の症状を抑制する成分を発見

”国民病”ともいわれる花粉症の有病率は年々上昇し、いまや40%を超える。花粉症に伴うアレルギー性結膜炎は患者のQOLを著しく低下させるが、抗ヒスタミン薬は慢性炎症を十分に抑制できず、ステロイド点眼薬は眼圧上昇の副作用を伴うことなどから、症状を抑制し副作用が少ない治療法の開発が待望されている。東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の村田幸久氏らはマウス実験の結果、ω-3脂肪酸の1種で青魚に多く含まれるイコサペント酸(EPA)がエポキシ化した代謝物5,6-DiHETEが花粉によるアレルギー症状を抑制することを発見したと、Front Pharmacol(2023;14:1217397)に発表した。

青魚で花粉症対策 花粉症の症状を抑制する成分を発見

アレルギー性結膜炎は、結膜でアレルギー性の炎症が起こる疾患。花粉などの抗原に感作された結膜が再度抗原に曝露されると、マスト細胞が抗原を認識して活性化し、ヒスタミンやセロトニンなどの炎症性物質を大量に放出する。これらが周囲の血管内皮細胞や神経を刺激し、血管透過性の亢進に伴う結膜の炎症や浮腫、痒みなどの症状が生じる。また、マスト細胞や周囲の細胞が産生したサイトカインは好酸球浸潤などを惹起し、炎症が慢性化する。

村田氏らはこれまで、大腸炎モデルマウスにおいて5,6-DiHETEが炎症反応を抑制すること( J Lipid Res 2018;59:586-595 )、5,6-DiHETEはアレルギー性炎症や痒みの増悪に関わるマスト細胞、血管、神経に多く発現しているTRPV4チャネルの活性を抑制すること( FASEB J 2021;35:e21238 )などを報告している。

今回はアレルギー性結膜炎に対する5,6-DiHETEの有効性について、花粉誘発性結膜炎モデルマウスを用いた実験で検証した。まず、マウスにブタクサ花粉を0日目と5日目の2回皮下投与して感作させ、10日目以降は花粉を1日1回5日間にわたり点眼してアレルギーを誘発した。

花粉点眼と同時に、〈1〉5,6-DiHETE 300μg/kgを腹腔内投与する群、〈2〉デキサメタゾン(DEX)2mg/kgを腹腔内投与する群、〈3〉非投与の対照群-に割り付け、最終日(14日目)に眼瞼の腫れと発赤、涙量に基づく臨床スコアを算出して重症度を比較した。

デキサメタゾンと同等の効果を確認
検討の結果、花粉点眼後に臨床スコアは有意に上昇したが、対照群と比べて5,6-DiHETE群およびDEX群では上昇が有意に抑制され、その程度は同等だった(64.8%vs.75.2%)。また、シルマー試験で評価した花粉刺激15分後の涙量についても、対照群に比べ5,6-DiHETE群で64.8%、DEX群で110%の有意な増加抑制が認められた(全てP<0.01)。

さらに慢性炎症への効果を検証するため、5回目の花粉点眼30分後の浸潤好酸球数を調べたところ、対照群に対し5,6-DiHETE群で85.0%、DEX群で82.3%の有意な増加抑制が認められた(全てP<0.01)。

第二世代ヒスタミンとも同等
村田氏らは、5,6-DiHETEがヒスタミンによる血管透過性と神経の興奮の抑制を介し、眼瞼の腫れや涙量の増加を抑えていると考察。4μgのヒスタミン点眼により結膜炎を誘発したモデルマウスを用いた実験で検証した。

ヒスタミン点眼15分前に、〈1〉5,6-DiHETE 300μg/kgを腹腔内投与する群、〈2〉第二世代ヒスタミン受容体拮抗薬ケトチフェン(KET)10mg/kgを腹腔内投与する群、〈3〉非投与の対照群-に分けて比較した。その結果、ヒスタミン点眼による涙量増加と血管透過性の亢進に対し、5,6-DiHETE群とKET群は同等の抑制効果を示した。実臨床での使用を想定し、5,6-DiHETEまたはKETを点眼した同様の実験でも、両群で同程度の抑制が示された。

さらに、セロトニン10μgを頬に注射して搔破行動を誘発したマウスを用い、痒みに対する5,6-DiHETEの効果を検証した。セロトニン注射の直前に5,6-DiHETE 300μg/kgを腹腔内投与すると、搔破行動が91.6%抑制された。

以上の結果を踏まえ、村田氏らは「5,6-DiHETEは、マスト細胞の活性化(脱顆粒)、ヒスタミンによる血管透過性の亢進、痒みの伝達を抑制することで、アレルギー性結膜炎の症状を抑えることを発見した。好酸球浸潤も抑制したことから、アレルギー反応急性期の炎症だけでなく慢性炎症に対する治療効果も示唆された」と結論。「5,6-DiHETEの摂取による花粉症の症状緩和につながる技術の開発に努め、患者のQOL向上に貢献したい」と展望している。(服部美咲)

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