コンニャク粉から「マグロの刺し身」 魚の代替食品広がる
水産資源の持続的利用につながる代替食品が、魚の刺し身にも広がっている。見た目だけでなく、味や食感が本物に近いと言われるほど質が向上。SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まる中、国内外で注目を集めている。(時事通信水産部長 川本大吾)
◆白っぽい筋まで再現
水産物の代替食品はこれまで、魚のすり身を使ったカニカマやウナギかば焼き、植物油などを使ったイクラなどが数多く開発、製造されてきた。魚の刺し身となるとそう多くは流通していなかったが、近年ついに代替食品がお目見えした。三重県菰野町の食品会社「あづまフーズ」は2021年から、コンニャク粉などを使ったマグロやサーモン、イカなど人気の刺し身を模した「さく」の販売を開始した。
同社によると、商品の販売は現在、米国やカナダなど海外への輸出が中心。「ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)などからの注文が多い」と話す。国内では、ベジタリアン料理の専門店や精進料理を出す寺などから注文があり、販売量は増加傾向という。
マグロとサーモンは、白っぽい筋まで再現されたリアルな見た目。同社は、消費者の反応について「『食感はコンニャク』という人がいる半面、見た目が似ているためか、本当の刺し身と勘違いしたという人もいた」と話す。今後は、調味料などで味付けした「漬け」の商品化や、他の魚種の開発も進めることにしている。
◆マグロの香り、食感にもこだわり
食肉加工大手の日本ハムは、食肉の代替食品に加え、魚の中でも需要が大きいマグロの刺し身の代替魚肉を開発し、飲食店など業務向けにPRしている。コンニャク粉や食物繊維などを原料に「特にマグロ特有の香りと食感にこだわって開発した」と説明する。
半年間の試行錯誤を経て、赤身のマグロらしさを感じられるレベルに仕上がったという。同社は「マグロの滑らかな舌触りや、赤身の鉄分の香りが再現できた」と胸を張る。関係企業などに商品説明会を実施し、興味を持つホテルのレストランや外食の関係者から問い合わせが入っているという。
今年4月に業務向けの販売を予定しており、それまでにさらに改良を重ねることにしている。同社は「妊婦の方など、魚を食べたくても食べられない人や、SDGsに関心がある人に、食事の選択肢を増やしていきたい」と意気込んでいる。
◆大手コンビニは海鮮丼を発売
大手コンビニでも、魚介の代替食品が商品化されている。ファミリーマートは2月上旬から、ウニやカニ、イクラ、ネギトロのようなネタを合わせた海鮮丼を東京都、神奈川県の一部店舗で発売した。
代替食材による海鮮丼は2月末ごろまでの販売だが、同社は「水産資源の持続可能性に貢献する原材料の使用は今後も前向きに検討していきたい」としている。環境問題への意識の高まりや健康志向を反映し、魚介の刺し身などの代替食品の開発はますます勢いを増しそうだ。