子どもたちに知って欲しいネットの危険 漫画家が実体験もとにネットリテラシー伝える漫画を公開
ネットで他人と交流することが当たり前となった現代。情報伝達が素早く行えて便利な一方で、子どもたちが犯罪被害にあう機会も増えています。
漫画家のきよまろさんも、こうした事態に強い危機感を抱いている一人。「ネットで知り合った人に個人情報を教えてはいけない」というタイトルでネットリテラシーを伝える漫画を自身のSNSにて公開しています。
きよまろさんは漫画家であると同時に、小学5年生の娘をもつ母。今回公開した漫画は娘さん頃の年齢でもわかるよう描いたそうです。
また投稿のコメントにて、「ネットリテラシーについてお子さんに伝える際にお使い頂けたらと思います。この漫画はフリーとしますので授業やお便り等への利用も可能です」と、その思いを託しています。
■ ネットで知り合った人に個人情報を教えてはいけない
漫画の主人公は、小学校高学年と思われる女の子。ネットの世界では好きなキャラクターをアイコンにしている「B介」と名乗るアカウントと、よく交流しているようです。
漫画「ネットで知り合った人に個人情報を教えてはいけない」
するとある時、「ゲームの話をもっとしたいから」とLINE交換を求められました。
漫画「ネットで知り合った人に個人情報を教えてはいけない」
女の子はその後、LINEを通じて連絡をとりあったようで、送られてきたB介の写真を見て「イケメン!」と夢中になります。そしてB介からの「Aぴょん(女の子のHN)の写真見てみたいな」という要望に応えて、自分の写真を送ってしまったのでした……。
漫画「ネットで知り合った人に個人情報を教えてはいけない」
実は写真の人物と、やりとりしていたB介は別人。女の子の写真や個人情報を入手するために仕掛けられたワナだったのです。
■ 個人情報を教えてしまった結果……
漫画では個人情報を見知らぬ人に教えてしまった結末も描かれています。
伝えた情報から生活エリアが特定され、学校帰りの「付きまとい」や「ストーカー」被害、さらには盗撮された上で「いじめをしている」などのデマを流される可能性が描かれています。
最悪なケースでは「誘拐など事件に巻き込まれる可能性」も。
■ 描くきっかけはある少女からの告白
きよまろさんが今回の漫画を公開したのには、ワケがありました。
昨年12月のある日のこと。小学生登校時の見守り活動(横断歩道の旗振り)を行っている時に、毎朝みかける小学6年生の女の子からうれしそうに話しかけられました。
聞くと、「最近彼氏ができた」とのこと。相手とはゲームの掲示板で知り合い、すでに写真も交換済み。自称「20歳の大学生」だといいます。
しかも住所と本名まで教えてあり、今度の冬休みに家族に内緒で会いに行く……という話でした。
少女は完全に相手のことを「彼氏」「いい人だ」と思い込んでいましたが、もちろんこれは危険な話。きよまろさんが今回紹介した漫画のように、「写真とは別人」で「子どもをおびき出すワナ」の可能性があるからです。
実際にこうした事件は増えており、おびき出された小学生や中学生がつれまわされ、相手が逮捕されるニュースも度々報じられています。
きよまろさんはこうした事態をすぐ察知。小学校に出向いて先生方に事情を話したところ、即座の対応を約束してくれたそうです。
■ リアル友達間のグループLINEがきっかけというパターンも
今回紹介したケースは何も特殊というわけではありません。前述したとおり、ニュースにも度々なるほど数が起きている出来事。
実は筆者の知人の娘も、親が知らない大人とLINEフレンドになっている出来事がありました。出会ったきっかけは掲示板などではなく「グループLINE」だったそうです。
もとは同じ小学校の友達がゲームの掲示板で知り合った人物。その子と仲良くなり、リアル友達間のグループLINEに入ってきて、そこから「ターゲット」を物色していたものと思われます。
知人は気づくと即座にスマホをとりあげ、通報までしたそうですが、「子どもを信頼して自由にネットに触れさせるのがどれだけ危険かよくわかった」と強く後悔していました。
小中学生を狙う性犯罪者はあの手この手で接触を試み、信頼させようとしてきます。いくら信頼する「リアル友達」の紹介だからといって、「知らない大人」と交流してしまわないよう、この点も注意しておく必要があるでしょう。
また気をつけなければならないのは、被害者は女の子に限らないということです。男の子だって起こりうる話。「女の子だけ」という思い込みは危険です。
■ 禁じるのではなく「正しい使い方を教える」ことが重要
近年多発するこれらの事態をうけて、長年ネットで仕事をする筆者のもとにも度々相談が持ち込まれています。
来るたびに答えているのが「禁じるのではなく、正しい使い方を教えることが重要」ということ。どうせネットを禁止したとしても、子どものことですから、「あの手この手」でかいくぐろうとしてきます。ネット環境が身近にある場合の「完全禁止は無理」。
ならば正しい使い方を教えて、細かく見守る方が安心。ネットで「ネット教育」などで検索すると、沢山の資料がでてきます。こうした資料は積極的に活用しましょう。
教える範囲を大まかに言うと、「知らない大人とはネット上で交流しない」「知っていても親の許可なしではつながらない」「電話、LINE、住所などを誰にでも教えない」、そしてできれば「自分が写っていてもいなくても、写真はネットにアップしない」まで。伝える際には、実際あった事件などもあわせて説明するとより「聞く耳」を持ってくれます。
さらに細かい話まですると、ネットマナーなども教えておくべきですが、それは各ご家庭でお子さんと話しながら伝えていくと良いかと思われます。
■ 正しく設定をして保護機能の活用を
こうした問題を避けるためにもう一つ重要なのが、スマホのキャリア設定および各種サービス(SNSなど)の年齢設定をしっかり行っておくこと。
子どものスマホや登録は「親の名義」で、年齢設定も親のまま。ということはないでしょうか?正しい年齢設定を行うだけで、ある程度の制限がかけられます。
また、SNSでは利用にあたって年齢制限が設けられています。X(ツイッター)、Instagram、TikTokは13歳以上。TikTokの場合はさらに細かく段階的年齢制限が行われており、13歳〜15歳はデフォルトで非表示などがあります。
そしてLINEは「利用推奨年齢」と表現しており、12歳以上。こちらもしっかり年齢登録をしておけば、18歳未満はID検索、電話番号の友達検索、オープンチャットの一部機能制限など、制限がかかります。
■ 起こった時の対応も考えておく
と、ここまで説明してなんですが、親や周りの大人がどれだけ注意していても、子どもたちは容易にだまされますし、やはり何らかの手段で他との交流を取りたがるはずです。それほどネットは魅力的。また、我が子はやってなくても「友達の巻き添え」というケースもあり得ます。
そこで重要なのが、「問題が起きてしまったら」も考えておくこと。そしてお子さんと、「最悪の事態が起きた時にやるべきこと」を話し合っておくことです。
いざ被害が発生した時に起きやすいのが「子どもが被害にあったことを隠してしまうこと」。
親に言いづらい、親との約束を破ってネットで大人と交流して被害にあってしまった……。こうなるのが最も最悪であり、犯罪者の思うつぼ。要求がエスカレートしていくことでしょう。そうなると子どもは犯罪者のいいなり。悲しい結末も考えられます。
最悪の事態が起きてしまった場合にそなえ、「すぐに親や周りの大人に相談しやすい環境」を普段から整えておくことが大切となってきます。相談相手は、親や先生などは話しづらいかもしれません。子どもの性格によっては、子どもが仲の良い親戚の人や知人を指定しておくのも一つの手です。
こうして最悪の事態を共有しておくことで、子ども自身の危機感を高められますし、被害さえ伝えて貰えれば、それ以上の被害は食い止められます。また、通報も忘れず必ず行ってください。
いきなり110番は怖いという場合には、その前段階で「#9110」という警察相談電話もあります。
最悪の事態など考えておきたくない、という人がほとんどでしょうが、「防災」と同じで「知っておくだけで助かる」こともあります。小中学生に限らず、高校生の子どもをお持ちの方もぜひ話し合う機会を持ってみてください。
<記事化協力>
きよまろさん(@sobomiyako98)
(宮崎美和子)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 宮崎美和子 | 配信元URL:https://otakei.otakuma.net/archives/2024021405.html