【感染症ニュース】感染性胃腸炎の全国定点報告数7週連続増加 医師「被災地の避難所ではノロウイルスの集団感染に注意」
冬になると流行するノロウイルスを含む感染性胃腸炎。国立感染症研究所の令和5年第51週(12/18-24)速報データでは、定点当たりの報告数は6.52。7週連続で増加しています。東京、香川、大分で10を超え、食中毒や家庭内感染が心配されています。
◆冬の感染性胃腸炎の多くは、ノロウイルスが原因
感染性胃腸炎は、さまざまな細菌やウイルス、寄生虫が病原体である感染症の総称で、発熱、下痢、悪心、おう吐、腹痛などが起こります。特に冬に流行する感染性胃腸炎の原因としては、ノロウイルスがあります。ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口から感染し、ヒトの腸管で増殖。おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもや高齢者などでは重症化の可能性があり、吐物を誤って気道に詰まらせて、死に至ることもあります。
◆被災地では、ノロウイルスの感染報告が
元日に発生した能登半島地震では、多くの方が避難所で過ごされています。今心配されているのが、感染症の流行です。生活用水が十分にないことから、衛生状況が悪化。ノロウイルスの集団発生の懸念があるといいます。感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「能登半島地震で被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。被災地では水が不足しており、衛生状況が悪化する恐れがあります。私が、東日本大震災後に救援で向かった避難所では、実際にノロウイルスの集団感染がありました。避難所では、多くの人が一時的に共に生活することになるため、人から人に広がる感染症に注意が必要です。ノロウイルスはふん便などから感染するので、トイレの清掃が十分でなかったりすると、感染が広がるおそれがあります。ノロウイルスに対して、一般的なアルコール消毒液は効果が薄く、石けんでの手洗いが一番とされていますが、被災地では難しい状況にあると思います。次亜塩素酸ナトリウムが含まれる塩素系漂白剤を薄めた溶液でトイレのドアノブや便座などを消毒するなど、できることから感染対策をしていただきたいと思います」と語っています。
◆体調が悪い時の避難について
手指の消毒やマスク着用が感染防止に有効なことは知られていますが、避難所では衛生用品などの物資が十分に確保できない場合もあります。また、人によっては、一日中マスクを着用することも大きな負担になる可能性もあります。体調の悪い人で、身の回りの安全が確保されている場合には、自宅や安全な場所にとどまるという選択もあるかも知れません。万が一に備え、体調が悪い場合の避難方法なども普段から考えておくとよいかもしれません。
◆ノロウイルスの感染を広げないために
ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、口に入って感染することがあります。ノロウイルスの感染を広げないためには、処理と消毒が重要です。
おう吐物の処理の注意点は、
・使い捨てのマスクやガウン、手袋などを着用して作業を行う。
・ペーパータオルなどで静かに拭き取り、塩素消毒後、水拭きする。
・拭き取ったおう吐物や手袋などは、ビニール袋に密閉して廃棄する。その際、できればビニール袋の中で1000ppmの塩素消毒液に浸す。
・しぶきなどを吸い込まないようにする。
・終わったら丁寧に手を洗う。
また、食器・環境・リネン類などの消毒の注意点は、
・感染者が使ったり、おう吐物が付いたものは、他のものと分けて洗浄・消毒する。
・食器等は食後すぐ、厨房に戻す前に塩素消毒液に十分浸し消毒する。
・カーテン、衣類、ドアノブなどは200ppmの塩素消毒液などで消毒する。
※次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があるので、ドアノブなどの金属部は消毒後十分に薬剤を拭き取る。
・選択するときは、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いし、十分にすすぐ。
※85℃で1分間以上の熱水洗濯や、塩素消毒液による消毒が有効。
※高温の乾燥機などを使用すると、殺菌効果が高まる。
◆家庭でも、ノロウイルス対策を!
塩素消毒液は、ご家庭にある次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤で代用できます。製品の濃度によって異なるので、表示をしっかりと確認をしてから使用してください。また、酸性のものと混ざると有毒ガスが発生することがあるので、使用上の注意をよく読んでから使用してください。
◆ノロウイルスによる食中毒にも注意!
また、冬にはノロウイルスによる食中毒も多く発生します。調理する人は、よく手を洗い、調理器具の消毒を心がけてください。また、体調が悪いときには、調理を控えるなど、健康管理をしっかりとして、感染拡大の防止に留意しましょう。
引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年第51週(12/18-24)速報データ
厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A、
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏