【医師が解説】「災害関連死」どう減らす?……命に関わる“避難所のリスク” 急がれる2次避難は「2週間以内に」
能登半島地震は発生から1週間以上が経過しました。石川・珠洲市だけで、避難生活で体調が悪化して亡くなった「災害関連死」が6人いると判明。速やかな「2次避難」が求められています。被災地の支援に入った医師に、避難所に潜むリスクなどを聞きました。
■熊本地震では直接死亡した人の4倍超
日テレNEWS NNN
有働由美子キャスター
「この寒さの中、避難生活で体調が悪化して亡くなった方が、珠洲市だけでこれまでに6人いることが分かりました。2016年の熊本地震では災害関連死は200人を上回り、直接的な被害で亡くなった方の4倍を超えています」
「今回も避難所での生活が厳しい状況で、心配です」
■医師「トイレを我慢せず、水分摂取を」
日テレNEWS NNN
小野高弘・日本テレビ解説委員
「今、避難所でどんなリスクがあるのでしょうか。支援に入った、日本医科大学大学院の横堀將司医師に聞きました」
「まず、食事の偏りがあります。提供されるパンやおにぎりだけだと野菜が不足します。ビタミンが不足すると、舌が荒れる舌炎が出かねず、ひいては食事ができなくなるといいます」
「次に、トイレを我慢する。数が足りておらず頻繁には行けなくなり、我慢しようとする人もいるかもしれません。ただ、それによって水分を控えようとすると脱水症状や、口の中が乾いて肺炎にもなりかねません」
「手洗いやうがいができない問題もあります。水が足りず、衛生状態も保てません。これだけ多くの人が避難所にいる中で、新型コロナウイルスやインフルエンザといった感染症が広がる可能性があります」
「こうした一つ一つのことが積み重なって命に関わる、それが怖いといいます。横堀医師は『トイレを我慢しないでください、水分を控えずにこまめに取ってください』と、特に強くおっしゃっています」
■2次避難へ…広範囲で受け入れの動き
日テレNEWS NNN
有働キャスター
「とはいえ、避難所でお話を聞いていると、トイレを我慢してしまう気持ちや状況はとてもよく分かります。だからこそ、少しでも環境の良い場所に移るということも大事になってきますね」
小野委員
「そこで『2次避難』が今、急がれています。横堀医師によると、落ち着いて生活できる環境づくりを、発災から2週間以内にできないと、災害関連死のリスクが生じます」
有働キャスター
「今週が非常に大事ですね」
小野委員
「岸田首相は『病気の方やお年寄り、妊婦を最優先に』と指示しています。石川県は旅館やホテルへの受け入れ準備を始めています。複数の自治体では、県営住宅や市営住宅を無償で提供すると表明しています」
「こうした、広い範囲で被災者を受け入れようとする動きが始まりつつあります」
■落合さん「電源と通信機器を」
日テレNEWS NNN
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「通信は重要なインフラなので、災害の拠点となり得る場所に、ソーラーパネルと補助電源や、スターリンクのような通信機器を備えておくことが、これからの時代は災害対策として重要なのではないかと思います」
「スターリンクは僕もよく屋外などで使いますが、意外とそこまで電気を食いません。例えば、補助バッテリーやソーラーバッテリーと組み合わせるのは非常に良い手だと思います」
「ただ、いずれも冬の雪国とは相性が良くないので、雪を溶かせるなど、対応できる技術が開発されるといいのですが…」
「とはいえ、僕たちに今できることは限られているので、被災していない人は寄付など、できることをやれるといいと思います」
有働キャスター
「北陸の皆さんは粘り強い、我慢強い気質と言われていますが、もうこれ以上できないよ、という段階に来ていると思います。ここから数日間が、関連死を1人でも減らせるかどうかの山場です」
「国や被災自治体の皆さんも連日頑張ってくださっていますが、これまでの震災や新型コロナで培ったノウハウを総動員し、希望する全ての人が、体も心も落ち着けて暖かい場所で避難生活を送れるよう、どうかスピーディーな支援をお願いします」
(1月9日『news zero』より)