「大麻は安全」は大間違い!「大麻グミ1個でも危険」な慢性毒性とは
最近、いわゆる「大麻グミ」を食べた人が体調不良を訴え、救急搬送される事件が相次いでいます。
2023年10月7日には、新橋の飲食店でライブ配信アプリの配信者が集まるオフ会が開かれ、10月が誕生日だった30代の男性1人がプレゼントとしてもらった大麻グミを食べた後、意識を失い病院に搬送されました。11月3日には、20代の男女4人が大麻グミを食べた後、東武スカイツリーラインの電車内で突然体調不良になり、病院に緊急搬送されました。11月4日には、東京都小金井市の武蔵野公園で開催された「武蔵野はらっぱ祭り」で、40代の男性が配った大麻グミを10~50代の男女5人が食べて体調不良を訴え、病院に搬送されました。11月15日には、東京都板橋区のマンションで、大麻グミを食べた20代の男女が手足のしびれや吐き気などを訴え、119番通報しました。詳しくは「危険ドラッグ入り「大麻グミ」で搬送者続出…都内の祭参加者も被害」をお読みください。
海外に目を向けると、大麻グミは10年以上前から問題になっています。親が買ってきた大麻グミを自宅に置いていたところ、幼い子どもがそれを食べてしまい尊い命が失われるという悲しい事件も起きています。ハロウィンで配られたお菓子の中に大麻グミ(袋から出したものは普通のグミと区別がつかない)が混じっていたという事例や、野外コンサート中に配られた大麻グミで何十人もが倒れるといった事件も起きていますから、他人事ではありません。「私は大麻なんかに手を出さない」と考え、無関心な人たちの近くまで脅威は迫っているのです。
「大麻は安全」は誤り! グミ1個でも危険と断言できる理由
大麻は麻薬や覚醒剤に比べると危険ではないという誤った認識が一部で広がり、安易に大麻に手を出してしまう人がいます。「少しぐらい、グミ1個ぐらいなら平気だろう」と考える人がいるかもしれませんが、とんでもない誤りです。
大麻に含まれ、幻覚などの精神作用を示す主成分は「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という化合物ですが、他の薬物にはない、恐ろしい性質をもっています。精神作用を示すことから乱用の恐れがあるため法律の規制対象となっている薬物には、ヘロイン、コカイン、メタンフェタミン(覚醒剤)、MDMAなどたくさんの種類がありますが、実はこれらの薬物はみんな、化学構造中に「窒素原子」を含んでおり、水に溶けやすい性質をもっています。それに対して、THCは、分子中にまったく窒素原子を含んでおらず、ほとんど石油のような物質で、水に溶けません。THCが私たちの体内に入ると、油ですから、全身の脂肪組織に徐々に浸み込んでいきます。そしていったん脂肪組織に入ってしまうと、なかなか血液循環には戻りません。実際、ヒトにおいて、乾燥大麻を一回喫煙しただけでも、およそ1カ月後に脂肪組織中に相当量のTHCが残存していたというデータが示されています(Biomed Chromatogr 3(1): 35-38, 1989)。THCの見かけの効果が消失した後でも、THCは長期間にわたって体内に残り続けるので、「慢性毒性」が問題となります。
最近問題となった大麻グミには、THCではなく、THCに似た「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という未規制の合成化合物(いわゆる「危険ドラッグ」の一種)が含まれていましたが、HHCHはTHCよりも、分子中の側鎖に含まれる炭素の数が1つ多くなっているために、さらに水に溶けにくく、さらに体内に残留しやすい性質があると考えられます。
「大麻グミ1個だけ」でも、THCやHHCHやその代謝物は、いつまでも体の中に残り続けてしまうのです。友人や知人から勧められて、その場の空気を悪くしたくないと思ったとしても、後で悔やむことにならないよう、1個たりとも食べてはいけないのです。