学校でインフルエンザの集団感染 5月になぜ起きた?…今後も感染拡大するのか
各地の学校で、インフルエンザの集団感染が発生しています。通常、インフルエンザは冬から春にかけて流行します。なぜ今、集団感染が起こっているのか、多摩ファミリークリニック(川崎市)院長の大橋博樹さんに聞きました。(聞き手・利根川昌紀)
ゴールデンウィーク明けから
――クリニックでもインフルエンザの患者は増えていますか?
ゴールデンウィーク明けから、目立つようになりました。地域の学校でも、集団感染が見られます。クリニックを受診するのは子どもが中心で、大人は子どもから家庭内でうつったというケースが多いです。今(地域で)はやっているのは「A型」です。
――新型コロナウイルスが流行する前は、インフルエンザは冬に感染者が増え、春になると減るという状態でした。なぜ今、流行しているのですか。
5月8日に新型コロナの感染症法上の分類が「5類」に移行し、マスクを外す人が増えました。こうした状況で、学校では運動会の練習や部活動が行われているため、その影響があると思います。
コロナ禍になる前にも、5月にインフルエンザの感染者が見られることはありました。ただ、この3年間は流行しませんでした。社会で全体的に、インフルエンザに対する免疫力が低下していると考えられます。
昨年から今年にかけては、インフルエンザが流行するという予測があり、インフルエンザワクチンを接種した人も多かったと思います。その効果もあってか、冬には流行しませんでした。ワクチンの効果が持続するのは5か月程度です。6月以降も感染拡大が続く可能性は十分あります。
予防するには
――感染を予防する方法はありますか。
インフルエンザウイルスは 飛ひ沫まつ 感染でうつります。風邪のような症状が出ている人はマスクを着けるといった対策をすることで、感染拡大を防ぐことにつながります。また、接触感染もしますので、手洗いも大切です。インフルエンザワクチンは、今の時期は、ほとんどの医療機関で在庫がない状況です。
――新型コロナと見分ける方法はありますか。
症状だけで見分けるのは難しいですが、お子さんが通う学校などでインフルエンザがはやっているかどうかというのは目安の一つになります。新型コロナは感染者が毎日発表されなくなり、感染状況は見えにくくなりましたが、診療をしていて、ゴールデンウィーク明け以降、新型コロナの陽性率が高くなってきているように感じます。新型コロナが5類になったということは、インフルエンザなどと同時に流行することが当たり前のように起こりうる。こうした状況を受け入れていくということだと考えています。
◆インフルエンザ= インフルエンザウイルスによって起こる感染症で、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、全身のだるさなどの症状が出る。例年12~3月に感染が広がり、国内で流行しているものには、2009年に新型として流行したH1N1型、A香港型、B型がある。
大橋 博樹(おおはし・ひろき)
大橋博樹(おおはし・ひろき) 多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。1974年東京都中野区生まれ。独協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。