増加する「コロナ後遺症」で症状残る人は85%の報告も…専門医が指摘する“感染から2か月”に絶対にやってはいけないこと
新型コロナの感染者が増加する中、後遺症に悩む人も増えている。
日本での感染者数は、12月4日時点で約2522万人(※厚労省HPより)。その約10%に当たる250万人が「コロナ後遺症」の可能性がある、と医師は指摘する。
後遺症を発症させないための注意点など、「コロナ後遺症外来」で5000人以上を診察してきた、ヒラハタクリニックの平畑光一院長が解説する。
後遺症でどう生きていけば良いのか…
――「後遺症外来」を訪れる人は患者全体のどれくらい?
7割以上になっていると思います。患者が殺到していて待ち時間が長くなっています。
年齢層で一番多いのは30代〜40代の働き盛りの方々で、「小さい子供がいるのに夫婦ともに後遺症になって働けない」など非常に悩まれていて、「どう生きていけば良いのか」という方が多いです。
――重症化リスクと後遺症は、比例する?
全く比例しません。
重症の方は高齢者に多いと言われていますが、後遺症は若い方のほうがリスクが高いという報告もあります。
特に日本の場合は、若い人はワクチンを打っていない方が結構多いので、それで後遺症が多いのかもしれないと言われています。
コロナの症状が軽くても後遺症になるケースは多く、少数ではありますが、無症状なのに後遺症だけ出てしまったという方もいます。
「仕事ができない」など68.7%に影響
――どんな症状を訴えてくる?
「倦怠感」が一番多くて94%。あとは仕事を失う原因の「思考力低下」が84%などになります。
「味覚、嗅覚、脱毛」が有名だったと思うんですが、半分くらいの47〜52%ほどです。
当院のデータだと、労働者の2958人中、仕事を失ってしまった方が238人います。
その他、休みながら働いている人を入れると、68.7%の方に影響が出ていて、かなりの方が給料が減ったり、無給の状況に追い込まれています。
これらは自死の原因にもなり、当院でも2人以上の方が自死されています。
症状がある中、周囲の無理解でさらに傷ついてしまい、うつ症状になってしまう。
周りの人がしっかり支えてあげないといけません。
8人に1人がコロナ後遺症
失業の危機やうつ症状から自ら命を絶つケースもあるコロナ後遺症だが、アメリカでは400万人が働けなくなったという報告がある。
――1割近くが“仕事を辞めざるを得ない”というのは衝撃的な数字ですね?
何も知らない方々からすると、衝撃的だと思いますが、アメリカでは既にコロナ後遺症で400万人が働けなくなっていて、そのために国が被っている経済的な損失は、最大で30兆円になっているとシンクタンクが報告しています。
――コロナにかかって後遺症になる人は何割ぐらい?
オランダの研究によると、8人に1人がコロナ後遺症になったと報告されていて、非常に多くの方が、実は感染した後、後遺症になっていると言うことになります。
日本では2300万人以上がコロナに罹患したので、少なく見積もって10%としても、230万人がコロナ後遺症になっています。
検査を受けられなかった方もいるので、実はもっと多くの方が後遺症になっている可能性もあります。
コロナ後遺症の寛解はわずか15%
では、後遺症は完全に治るものなのか。
フランスのデータによると、85%が「改善しても、症状は残る」と指摘している。
――後遺症が改善するまでの期間は?
当院で2ヶ月以上診察できた“準寝たきり”の患者さん645人中76.4%は、ある程度生活できる、あるいは、仕事できるところまで回復しているので、ちゃんと治療すれば改善します。
ただ完璧に消えて無くなることはそんなに多くなく、フランスの論文になりますが、コロナ後遺症になってから1年後にすべての症状が消えている方は、わずか15%しかいないというデータがあります。
85%の方は、改善しても、症状は残っている状況になります。
「後遺症になってもそのうち治るだろう」と思われている方がいたら、ちょっと危ないです。
そんな簡単な病気ではないです。
一旦症状が消えたと思っても、無理をしたらまた、出てきちゃうとか、お酒飲んだら出てきちゃうという事もありますし、ちょっと休めば大丈夫ではなくて、下手すると仕事を失うリスクもあるので、軽く見てはいけません。
一方で、ちゃんとケアをしていれば、症状を改善することはできます。
寛解ができたら最高ですが、寛解を目指すというよりは、症状を軽減させて、生活が成り立つようにしましょうという感じになります。
感染から2ヶ月以内は非常に危険
コロナに罹患した場合、2か月間は“安静”にすることが大事だという。
――後遺症にならないために大切なことは?
感染してから2ヶ月以内は、非常に危険な時期なので、無理しないでください。
それを守っていただくだけで、準寝たきり以上になる方を減らせると思います。
厚労省から出ている『罹患後症状のマネジメント』という手引きには、「動いた後に症状悪化が見られる場合は、運動療法は避けなくてはいけない」と書いてあります。
このことがまだ一般のお医者さんにも知られていない、会社の方や家族にはもっと知られていない。それによって、患者さんたちがどんどん症状を悪くしています。
――どういうことをやってはいけない?
疲れることはすべてダメです。
例えば階段を上るにしても、その後疲れてしまうなら、やってはいけません。
他の病気だと、少し無理してリハビリした方が早く治るからと頑張って運動したりしますが、コロナの場合はかえって悪化させてしまう。新しい病気ですから、新しい治療が必要ということです。
あと、アルコールは絶対にダメです。
症状が残っている方は、お酒を飲むと結構な確率でぐっと悪くなり、また、治りづらくなることがありますので、症状があったらアルコールは諦めてください。
アルコールを飲むと免疫系がかなりダメージを受けるので、後遺症もそれにつられて悪くなります。
あとは、酸素不足で症状が出ている側面があるので、たばこも控えてください。