高齢者に車を売らない販売店 免許自主返納で新サービス【WBS】
今月、高齢ドライバーの事故対策として、実車試験制度が始まりましたが、高齢者が自主的に運転免許を返納する動きも広がっています。この免許返納を新たなビジネスにつなげる取り組みを取材しました。
群馬県の老舗の茶店「水本園」で会長を務める田中光一さん(84)。足が不自由な田中さんの外出のお供は電動車いすです。
田中さんが使っているのは電動車いす「WHILL Model F」です。コントローラーひとつでアクセル、ブレーキ、方向転換の操作が可能。3年前の骨折以来、運転をやめ、外出を控えていましたが、先月、電動車いすを購入し、商店街の散策などに出掛けるようになったといいます。
「家の中にいるよりは、たとえ30~40分でも出ると雰囲気がだいぶ違う」(田中さん)
田中さんが車いすを購入したのはトヨタのディーラー「トヨタカローラ高崎 問屋町店」です。なぜ自動車販売店が電動車いすを取り扱っているのでしょうか?
店では店員が「運転免許を返納した後に移動をどうしようかというところで、気軽に乗ってもらえる『ちょい乗り』ではすごくいい」と、シニア世代の顧客に向け、運転免許返納後の交通手段として電動車いすを提案しています。
今月、免許返納者数の増加につながることが予想される制度が始まりました。高齢ドライバーが免許を更新する際の実車試験です。ペダルの踏み間違え事故が多発していることから、段差乗り上げの試験では、アクセルを踏んで段差に乗り上げた後、ブレーキに切り替えて素早く停止できるかを確認します。
試験の対象は過去3年間に信号無視や運転中の携帯電話使用などの違反歴のある75歳以上。新制度を対象者はどう受け止めているのでしょう。
77歳の男性は、段差乗り上げの試験について「全然大丈夫だろうと思っている。そんなことを言ってはいけないが」と話しますが、2019年に起きた池袋暴走事故の後は家族から免許の返納もすすめられていると明かします。
去年、免許を自主返納した人の数は50万人ほどに上ります。トヨタカローラ高崎では、電動車いすの販売を通じて顧客との関係を維持し、子どもや孫など次世代の新車購入につなげたい考えです。
「『免許を返す』や『もう車を手放す』という声を、最近多くもらうようになった。それが当社の課題でもある。免許を返納した本人を含めて、下の世代の人まで関係を続けていくことが一番の狙いだ」(「トヨタカローラ高崎」経営企画室の黒田俊祐課長)
※ワールドビジネスサテライト