子供はウクライナのニュースをどう受け止める? 大切なのは親子の会話
「戦争の話をするのは、子供にとってつらすぎる」「うちの子供にはまだ難しすぎる」そんな思いから、子供との会話の中でロシアのウクライナ侵攻に関する話題を避けている保護者もいるかもしれません。しかし小児精神科の内田舞医師によると、大変なことが起こっているのに大人から何も教えてもらえない時、子供の不安は強くなってしまう場合があるそうです。では、どのように子供と話し合っていけばよいのでしょうか。意識しておきたい3つのポイントを聞きました。(Yahoo!ニュース Voice)
不安を和らげるために大切なのは「親子の会話」
連日のウクライナの報道の影響で、大人も、大人が見ているニュースを覗いている子供も、不安を抱えていると思います。不安の現れ方は人それぞれです。例えば、アラームの音やサイレンの音に敏感になる、なかなか寝付かない、やたらとイライラする。または、頭痛、腹痛、倦怠感、耳鳴り、めまいなどの身体症状が出る場合もあります。子供の場合は、親から離れることを嫌がる、今まで一人で眠れていたのに一緒に寝たがるなどの変化があるかもしれません。
不安は「言葉」にすることで和らぐこともあるため、このような状況において、親子の会話はとても大切になります。ですが、子供にはまだ難しすぎる、つらすぎることだと、あえて話題にするのを避けたり、あいまいな表現で事実を誤魔化している方もいるかもしれません。あるいは、戦争という重いテーマについて、どのように子供と会話していいかわからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
これから、親子の会話で意識しておきたい3つのポイントをお伝えしようと思います。
1)事実を伝える、嘘はつかない
テレビに映る光景、アナウンサーの声のトーン、大人の会話、友達から聞く話などから、子供は敏感に情報を得ています。たとえ年齢が低い子であっても「何か大変なことが起こっている」と感じ取れる子もいます。
そんな風に「何かが起こっている」と感じながら、大人が何も教えてくれない時には、「自分が知ってはいけないほどの怖いことが起きているんだ」と、逆に恐怖が強くなってしまうことも起こりえます。または「大事なことを教えてくれないってことは、お父さんとお母さんは、私のことを真剣に扱ってくれていないんだ」と不満に思う子もいるでしょう。
だからこそ、シンプルな言葉で事実を述べてあげてください。
「ロシアがウクライナを攻撃して、おうちやスーパーが爆弾で壊されちゃって、たくさんの人が怪我をしたり、亡くなったりしているんだよ。ウクライナの人たちは自分の身を守るために、他の国に逃げているんだよ」
その際、子供からこんな質問を受けるかもしれません。
「日本でもこんなことが起こるの?」「私たち家族もバラバラになっちゃうの?」「私も死んじゃうの?」
これはとても自然な質問なので、まずは共感してあげてください。それと同時に、しっかりと否定して、安心させてあげましょう。
「そういう風に考えたんだね、怖かったね。でも大丈夫だよ。あなたの安全は守られているよ」
子供の質問によっては、どんなことを想像しているのか、どんな不安があってその質問をしているのかを聞いてから答えてあげてください。
例えば、「第三次世界大戦が起こるの?」という質問を受けたとします。「第三次世界大戦」という言葉に対して、大人が理解している内容と、子供たちがイメージしていることは大きく違うかもしれません。まずは「第三次世界大戦ってどんなものを想像しているの?」と聞き返して、子供が具体的にどんなことを不安に思っているのか、詳しく話を聞いてあげてください。
2)人助けについて一緒に考える
心理学用語で、「他愛」という言葉があります。自分が抑うつや不安を感じている時、「自分が誰かの役に立っている」と感じると、つらい気持ちが和らぐという考え方です。
ですので、子供と一緒に「どうやってウクライナの人たちの助けになってあげられるか」を考えてみるとよいでしょう。難民支援基金などに寄付をすること、地域にウクライナ系の方が住んでいるなら優しい声をかけることなど、家族でできることを話し合ってみてください。
そして、ウクライナから逃げてきた人たちを受け入れている国があること。困っているウクライナの人たちに、飲み物や食べ物、衣類や毛布、赤ちゃん用のミルクやオムツを無料で差し出している人たちがいること。そういった、ウクライナの人たちを助けている支援者(ヘルパー)の存在に目を向け、子供に教えてあげましょう。
3)簡単に悪者を作らない
子供向けの童話などには大抵悪者がいて、正義の味方が悪を倒す構図が多いです。しかし現実世界においては、悪者と善人の対決ではない複雑な関係が多いです。
ロシアのウクライナ侵攻に関しても、戦争を始めたロシアという国への批判や、大統領への批判は合理的なものかもしれません。しかし、その批判を拡張して、「ロシア人は全員悪者だ」と考えてしまう思考は非常に危険です。
9・11のテロの後には、イスラム教徒の方や、イスラム教徒と疑われた人への暴力が頻発しました。アメリカでは第二次世界大戦中、日系アメリカ人は「敵国の人」として収容施設に送られました。このような暗い歴史は絶対に繰り返してはいけません。
もし知り合いにロシア人がいたり、近所にロシア料理店があるという場合は、他の人と同じように優しい心を持って接するよう、家族で話し合ってみましょう。
今は不安でもいい
コロナ禍でのストレスもたまってきている今の時期に、悲惨なニュースを聞いて不安になってしまうことは、大人にとっても子供にとっても普通のことです。今は、不安でもいいんです。むしろ自分たちの不安な思いを肯定して、家族内で話し合える雰囲気を作ることが大事だと思います。
そして、ニュースやSNSを見すぎないことも重要です。春風の心地よさを感じたり、美味しい食事を楽しんだりと、自分の生活の中の喜びを噛み締めることも忘れないでください。これは子供だけでなく大人にも言えることなので、自分の楽しめる時間や、家族と少し離れて過ごす一人の時間を大切にしてください。
また、不安はほとんどの場合は時間と共に落ち着くものです。気にしすぎないことが一番ですが、もし不安が原因で日常生活を送ることが苦しくなることがあれば、是非専門家の受診を考えてみてください。
私も同じようにコロナや戦争に関して不安を抱えていますが、安全に過ごせる日々に感謝しつつ、家族と歩んでいこうと思います。一緒に頑張っていきましょう。