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心の病気 兆候に早く気づくには

 「心の病気」の兆候にできるだけ早く気づくには? 早期症状チェックリスト【精神科医監修】

うつ病、統合失調症、不安症といった精神疾患は、早期発見をして適切な治療を受ければ十分回復が期待できる病気です。しかし、体の病気と違い、心の病気はその兆候に気づきにくいようです。精神科医で東京都立松沢病院院長の水野雅文医師が執筆した書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)から、精神疾患の早期症状チェックリストなどを一部抜粋してお届けします。

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病気はより早い段階から治療を始めるほど治りやすいものです。「がん」はその典型例で、早期に治療を開始すれば、命にかかわることなく治る可能性が高くなります。

精神疾患もこうした体の病気と同じで、「治療を始める時期」が「病気の治りやすさ」を左右します。たとえば統合失調症による脳の変化は、発症後2〜5年のうちに進行することがわかっています。そのため発症後できるだけ早く、遅くとも3年以内に治療を始めることが理想的とされています。脳の器質的変化が明らかになっていないうつ病や不安症といった、ほかの精神疾患も同様です。早期から適切な治療を受けることで、より早い回復を期待することができるのです。

早い段階で治療を始めるにはまず、できるだけ早く病気の兆候に気づくこと、そして時間をおかずに医療機関を受診する必要があります。たとえば統合失調症の場合は幻覚や妄想が現れるとか、うつ病であれば気分が落ち込んだり、何をしても楽しめなかったりする日が続く、というように病気ごとの特徴的な症状を知っておけば病気に気づきやすくなります。

こうした症状は病気が始まってから現れますが、実はその前に「病気の予兆」とされる症状が出ていることが多いのです。この症状を知っておけば、さらなる早期発見が可能です。

よく見られるのは、「不眠」や「食欲不振」「気分の落ち込み(うつ状態)」「不安やイライラ」「集中力の低下」です。いずれも健康な人でも日常的に体験する不調です。

しかし、健康な人では何週間も続くことはありません。不眠といってもいつもと比べて寝つきが悪いとか、朝の寝覚めが悪いなど、「なんとなくおかしい」ということで気づければ、体調を整えやすくなります。

いずれの症状も疲れているときや調子が悪いときによく経験するありふれたものなので、そのままにしてしまう人が少なくありません。実際、精神疾患の患者さんに、「こういう症状が出ていませんでしたか?」と聞いてみると、「そういえば……」とたいていの人が思い当たりますが、当時は気にも留めていなかったという人がほとんどです。

この「いつもとは違う」「ちょっとおかしい」という超早期の変化を見逃さずに医療機関を受診し、適切な治療を受けることができれば、精神疾患の発症を防げる可能性も十分にあるのです。

■うつ状態=うつ病ではない

近年は「うつ(depression)」という言葉が広く浸透し、「気分が落ち込んでいるからうつ病だ」などと、なんでもかんでもうつ病にしてしまうケースも増えています。インターネットで集めた情報をもとに、「私はうつ病なんです!」と自己診断をする人もいるほどです。

たとえば試験に失敗したり、好きな人に振られるなど、何かショックを受けて気分が落ち込んだ状態、つまり「うつ状態」になるのはよくあること。

ショックな出来事に対する心の反応なので、原因が解消されたり、気分転換をしたり、ある程度時間が経過したりすることで次第にショックはやわらぎ、回復していくものです。うつ病の場合は、たとえ原因となっていた問題が解決しても気分が回復せず、仕事や学校に行けなかったり動くことができなかったり、日常の生活に大きな支障が生じるので、治療が必要になります。

うつ状態はうつ病の症状の一つですが、うつ状態=うつ病ではないのです。

※『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より抜粋

水野雅文(みずのまさふみ)
東京都立松沢病院院長 1961年東京都生まれ。精神科医、博士(医学)。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。イタリア政府国費留学生としてイタリア国立パドヴァ大学留学、同大学心理学科客員教授、慶應義塾大学医学部精神神経科専任講師、助教授を経て、2006年から21年3月まで、東邦大学医学部精神神経医学講座主任教授。21年4月から現職。著書に『心の病、初めが肝心』(朝日新聞出版)、『ササッとわかる「統合失調症」(講談社)ほか。

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