【独自】ネット中傷対策、侮辱罪に懲役刑導入へ…テラハ事件では科料わずか9千円
インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷対策を強化するため、法務省は刑法の侮辱罪を厳罰化し、懲役刑を導入する方針を固めた。来月中旬に開かれる法制審議会(法相の諮問機関)で同法改正を諮問する。罰則の引き上げに伴い、公訴時効も1年から3年に延びる。ネット上の投稿は加害者の特定に時間がかかり、摘発できないケースもあるが、法改正により、抑止効果や泣き寝入りの防止につながるとみられる。
侮辱罪は、公然と人を侮辱した行為に適用される。具体的事例を示して人の社会的評価をおとしめる名誉毀損(きそん)罪に対し、事例を示さずに悪口を言っただけでも成立する。
ただ罰則は、名誉毀損罪が3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金なのに対し、侮辱罪は拘留(30日未満)か科料(1万円未満)と規定。刑の重さで原則決められている公訴時効も、名誉毀損罪が3年なのに対し、侮辱罪は1年と短い。
侮辱罪を巡っては、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が昨年5月に自殺した問題で、ツイッターにそれぞれ「生きてる価値あるのかね」「きもい」などと書き込んだ男2人が略式命令を受けたが、9000円の科料にとどまり、厳罰化を求める声が上がっていた。
同省は昨年6月にプロジェクトチームを設置し、罰則のあり方などを検討。SNSなどでの中傷は不特定多数から寄せられる上、拡散してネットに残り続けるなど被害が深刻化しており、懲役刑の導入は必須と判断した。その上で、侮辱罪は対象となる行為が広いため、名誉毀損罪と同じ「3年・50万円以下」とはせず、「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」を追加することにした。
また、刑事罰を科すには投稿者を特定する必要があるが、投稿者の情報を開示する手続きに時間がかかり、時効が過ぎることも課題になっていた。厳罰化により、時効も名誉毀損罪と同じ3年に延びるため、摘発が可能な事件が増える可能性もある。