ワクチン夫婦同時NG 医師解説
「コロナワクチン夫婦同時に打たないで」2回目接種後の高熱2割超 医師に聞く副反応対策
河野太郎行政改革相は先月28日、コロナワクチン接種後に副反応が生じた場合などに公務員が「ワクチン休暇」を取れるようにしたことを表明した。接種が進んでいる医療従事者らのデータから、とくに2回目の接種後に頭痛や発熱などの副反応が起きるケースが多いことが判明している。これから接種する人は何に気をつければいいのか。医師に対処法を聞いた。
【データ】発熱、頭痛だけじゃない!ワクチン接種後に確認された副反応と割合はこちら
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「朝に注射を打ち、日中は『ちょっとだるいな』という程度で普通に過ごしていたんですが、夜になってどんどん熱が上がってきました。頭痛もひどく、翌日は丸一日ベッドから動けませんでした」
神奈川県内の医療機関に勤める30代の女性はこう語る。女性は4月30日に1回目、5月20日に2回目のコロナワクチンを接種。1回目の接種後は腕に少し痛みを覚えた程度だったが、2回目は接種した日の夜に38.5度の熱が出た。それから39度近い熱が翌日の夜まで続き、頭痛とだるさで食事もとれなかったという。女性は接種翌日、翌々日と、2日間仕事を休まざるを得なかった。
「一緒に打った同僚では、ほとんど症状が出なかった人もいましたが、熱が出て仕事を休んだり早退したりした人もいました」
コロナワクチンの副反応とみられる症状。先行接種した医療従事者たちのデータから、2回目接種後に副反応を起こす人の割合が1回目よりも高まることが判明した。
厚生労働省の調べでは、接種を受けた医療従事者2万人弱のうち、副反応として38度以上の高熱がみられたケースは、1回目接種後は0.9%だったのに対し、2回目接種後は21.6%に及んだ。
山形大学医学部附属病院は、同院で接種した職員や医学部学生らの接種後の副反応について、詳細なデータを公表した。3月8日から4月9日にかけてアンケート調査を行い、1回目に接種をした1247人、2回目に接種をした974人から回答を得た。その結果、1回目接種→2回目接種で症状を訴えた人の割合は、次のように変化していた。
(1)接種部位の痛み 91.5%→91.6%
(2)接種部位の腫れ 9.7%→18.1%
(3)発熱(37.5度以上) 3.3%→43.4%
(4)疲労・倦怠感 35.4%→80.7%
(5)頭痛 19.7%→55.1%
(6)悪寒(寒気) 6.3%→51.5%
(7)吐き気・嘔吐 4.0%→10.6%
(8)注射部位以外の筋肉痛 26.1%→37.7%
(9)関節痛 6.3%→37.1%
1回目接種後の副反応について同院は「多くは接種当日から翌日に発生し、1~2日間で軽快していました。症状に対しては経過観察で済んだ例が多いですが、一部内服などの治療を要したり、日常生活に支障をきたしたりする例もありました」と説明する。
一方、2回目については、「1回目と比較して、いずれも症状の持続期間が長く、症状の程度も重くなっていました」。さらに「1回目で症状が出現した人は、2回目に同様の症状が出現する頻度が非常に高くなることが示されました」という。
37.5度以上の発熱については、1回目接種後は3.3%だったのに対し、2回目接種後は43.4%だった。調査結果を発表した同院第一内科講師・井上純人医師はこう話す。
「インフルエンザワクチンで発熱の副反応が起こる割合は1~2割です。インフルエンザワクチンを打った周りの人から、高熱が出て大変な思いをしたと聞くことはそれほど多くないと思います。それと比べると頻度が高いといえるでしょう」
また、若い人や女性に副反応の発症頻度が高いという特徴もみられたという。
「若い人に多いのは、免疫反応が強いからだと考えます。一方、女性に多いのは、あくまで推定ですが、からだが小さいため成分が取り込まれる量が多いからと言われています。また、ワクチンには化粧品にも含まれる成分・ポリエチレングリコールが含まれるため、副反応の頻度が高いのでは、とも言われています。ただし、これらはあくまで仮説として言われていることであり、真偽は定まっておらず、当院でもそれらについて検証していません」(井上医師)
一方、65歳以上の高齢者については、「今回の調査対象に含まれるのは数人だったため、副反応もこの調査と同じになるとはいえない」と井上医師は言う。
実際に自ら副反応を経験した医師にも話を聞いた。元ファイザー社臨床開発統括部長であり、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会委員を務める川崎市立看護短期大学長の坂元昇医師は、3月23日と4月10日にワクチンを接種した。2回目接種から16時間後に発熱し、翌日は38.5度を越えたという。
「私自身は発熱していても感覚的には少し熱っぽいかなと思った程度で、食欲もありましたし、それほど苦しい気持ちもありませんでした」(坂元医師)
2回目を接種したのは土曜日。翌日に副反応が出たとしても、仕事をする月曜日には落ち着くだろうと考えての日取りだった。だが、それが誤算だった。
「月曜日の朝も発熱が続いていました。海外のデータなどで、高齢であれば副反応は比較的小さいということは承知していたのですが(注:坂元医師は68歳)、38度の発熱が2日間続くことは想定外でした。倦怠感と接種部位の筋肉痛はほぼなくなっていたのですが、発熱時は出勤できないため、会議の予定などをキャンセルしました」
ワクチン接種の際に解熱鎮痛剤をもらったという坂元医師。しかし薬を飲んでも「熱はまったく下がらなかった」という。
「看護師の中にも解熱鎮痛剤が効かなかったという人がいましたし、『いままで体験したことのない』だるさを感じ、不安だったという話も聞いています。医療従事者でさえ不安なのですから、一般の人はより不安に感じるのではないかと思います。ごく少数の人だけでなく、多くの人が同じ状況を経験しているということを知っておいてほしいと思います」
一方で坂元医師は、副反応があったことに「安心した」面もあると話す。
「データがあるわけではないのですが、副反応はおそらく体内における免疫反応の結果なので、守られているという強い安心感が得られたのも事実です。個人的な感想ですが、このワクチンには本当に効果があるんだという実感が湧きます」
自らの経験も踏まえ、坂元医師は接種の前に3つの準備が必要だと話す。
1つ目は、接種から2日間は外に出る予定を入れないこと。前述のとおり、37.5度を超える発熱の可能性があるからだ。
2つ目は、接種後に症状があったとき、相談できる相手を決めておくことだという。
「本来は医師に相談することが必要だと思うのですが、現状、接種を担当する医師は極めて多忙で、つながらない場合もあるかと思います。ワクチンを打つ予定があることをあらかじめ誰か知り合いに告げておき、副反応で不安になったときは連絡を取る。医学的な解決がなくても、話すことで不安がやわらぐと思います。もちろんひどい副反応の場合には救急受診も必要になるかもしれません。コールセンターや救急医療機関を紹介してくれるサービス機関の連絡先をあらかじめ用意しておくことも大切です。かなり希かとは思いますが、接種による発熱だと思ったのが、実はコロナの感染による発熱だったという例もあるようなので、特に1回目接種後の発熱は注意が必要かもしれません」
そしてもう一つ重要なのが、同居する家族と接種のスケジュールをずらすことだ。
「たとえば夫婦で同じタイミングで接種して発熱すると、共倒れになる可能性があるからです。ある地方では、高齢者施設の利用者や従事者に一度にワクチンを接種したところ、同時期に発熱して、介護者によるケアが回らないという事態が起きたそうです。家族の場合もこうしたことを起こさないよう、タイミングをずらすことが重要です」
前出の井上医師は、これから接種する人に注意してほしいこととして以下の2点を挙げる。まず、ワクチンは肩に注射するので、肩が出せる服装にしておくこと。スムーズな接種のために役立つ。そして、問診票を書く際、あらかじめかかりつけ医と相談の上記入すること。たとえば集団接種会場で接種する場合、初対面の医師とアレルギーや基礎疾患の病状について相談をしても判断が難しいことが多いからだ。
「自分の担当患者でアレルギーや基礎疾患がある人については、症状を把握したうえで、『それでもワクチンを打つことによる利益が大きい』いう説明をしてからワクチンを接種してもらうようにしています」(井上医師)
副反応が出るかどうかは人によって異なるが、接種を受ける前にできる限りの対策をしておきたい。
(文/白石圭)