騙した者はダマされる。持続化給付金詐欺に仕掛けられた二重の罠。真の狙いとは!?
今、持続化給付金を不正に受給者した人たちの逮捕が続いています。
その多くは20代前後の学生や給与所得者たちです。しかしこの詐欺は、甘い言葉にそそのかされた若者たちが国からの給付金を騙し取ったという単純なものではありません。ここには、二重の罠が仕掛けられており、背後でうごめく組織的な詐欺の巧妙さにうならざるをえません。
若者たちがこの詐欺に関与した背景には、SNSの存在が大きくかかわっています。
友人から「代行業者に依頼して、ネットから申請をすれば、持続化給付金を受け取れる」といったメッセージが送られてきて、多くの人たちがお金を受け取れるという気軽な感覚で参加しています。そして代行業者の指示のもと、前年度に事業収入があったように、税務署へ虚偽の確定申告をした後に、持続化給付金の申請をして100万円を手に入れます。その7割~8割を代行業者に払い、残りの金額を自分たちの懐にいれるというわけです。
すでに、偽の確定申告書を作って代行業務をしていた男らも逮捕されており、100人の名義を使って、不正受給の手助けを行っていました。これだけで1億円です。これは詐欺グループのひとつに過ぎないでしょうから、全国では相当な金額が騙しとられていることでしょう。
今回の一連の不正受給は、振り込め詐欺などのノウハウを注ぎ込んで行われたものだとみています。
いくつかの共通点をあげますと、特殊詐欺では、高齢者からキャッシュカードを騙し取り、そのカードでATMからお金の引き出し役を担うのが「出し子」といわれる人たちで、その多くはSNSを通じて集められます。同じように、今回の不正受給への誘いもSNSから行われています。
詐欺グループからみれば、出し子は警察に捕まってもよい存在ですが、今回の不正受給を行った若者たちも捕まってもよい”捨て駒”と見ている点です。本来の確定申告は3月15日頃までですが、コロナの影響によりその後も申告できることになっています。それを利用して、本来の期限後に確定申告をして、給付金の申請をした人は洗い出されて逮捕されることは、すでに詐欺グループはわかっているはずです。ゆえに、振り込め詐欺の金の流れと同様に、国からの詐取した金も、足がつかないように詐欺の上層部に流れるような仕組みを作っていると思われます。
今、不正受給をした人たちは逮捕を恐れて、親と共に弁護士に相談したり、不正に受け取った100万円を国に返しています。実は、持続化給付金詐欺のもくろみはここにあると私は考えます。
おそらく、これまでの特殊詐欺の被害と同様に、代行業者へ払ったお金を取り戻すのは極めて難しい状況ですので、不正受給者たちの受け取った金額以外の70~80万円は自らが埋め合わせなければなりません。つまり、詐欺グループは不正受給者を詐欺の手足に使いながら、それを実行した人たちから数十万円ものお金を騙し取ることに成功しているといえるわけです。
不正受給者は、国を騙して自分がお金をもらったつもりで、実は騙されていたという、二重の罠にはまっていたのです。騙そうとするものを、巧みにダマす。詐欺グループは、実に頭の良い方法を考えています。
今もなお、続く不正受給への誘い
8月に入っても、不正受給の誘いはSNSを通じてやってきています。
知人のもとには「個人事業者としてコロナ補助金を申請代行します」というメッセージが届いています。ちなみに、この方は会社勤めの方で事業は行っていません。それにも関わらず「決算書をまず作り、申請すると数十万円のお金が下ります」といい、この業務は違法なので「口外しないように」という内容まで付け加えられています。
この文面からはなんの補助金かはっきりしませんが、申請の際の必要書類に「お金を受け取る際の銀行口座の通帳、運転免許証、マイナンバーカードのコピー」とありますので、持続化給付金の不正受給の可能性は極めて高いと思われます。おそらく、ここではっきりと給付金と書いてしまうと、今、騒がれている詐欺だとバレてしまうので、補助金などという言葉で誤魔化しているのかもしれません。
コロナ禍のなかで、経済的に困っている人を狙うメールは今も送られてきているのです。
今回、詐欺の手足になってしまった人の多くは、20代前後ですが。どうしても若者はSNSの情報をうのみにしたり、友人との関係やその場の空気感を重んじるあまり、誘われると断り切れない傾向があります。まさにそうした点を詐欺師に突かれたといえます。
2022年には成人年齢が18歳に引き下げられますが、若者がこうした悪事に簡単に手を染める現状をみるにつけて、今、詐欺や悪徳商法への教育が充分になされているのか、非常に心配になります。
「騙した者は、自らもダマされる」この言葉を肝に銘じておく必要があるでしょう。