新潟県内の海水浴場などで酒気帯び状態でマリンレジャーを行い、死亡または行方不明となった人は、2014~18年の5年間で9人と、死者・行方不明者全体(49人)の約2割を占めることが、第9管区海上保安本部への取材で分かった。県内では今年も2人が死亡・行方不明となっており、9管は「飲酒すると運動能力や判断力が下がる。酒を飲んだら絶対に海に近づかないで」と呼びかけている。
今年8月14日、男女5人がプレジャーボートで新潟西港を出発し、沖合約11キロで海に飛び込んで遊んでいたところ、男性3人が流された。2人は救助されたが、酒を飲んでいた東京都港区の男性(28)は今も行方不明となっている。救助された男性の一人は9管に対し「飲酒して楽しくなり、飛び込んでしまった」と話した。
5月には、柏崎市の海水浴場でも、バーベキューで飲酒後に海に潜った韓国人男性(56)が水死した。現場は砂浜から約10メートルと陸に近く、水深は1メートル程度だった。
9管によると、14年からの5年間で、酒を飲んでいない状態でマリンレジャー中の海難事故に遭った人は139人。死者・行方不明者は40人(28・8%)だった。一方、飲酒した状態での事故者数は19人で、死者・行方不明者は9人(47・4%)。飲酒した場合、事故に遭った人のほぼ半数が死亡・行方不明となっていた。9管は新潟、富山、石川の3県の沿岸を管轄しているが、今年、飲酒して死亡・行方不明の事故が起きたのは新潟だけだという。
柏崎市の海水浴場14か所の安全管理を担う市商業観光課は、「ライフセーバーのいない時期や時間帯の監視は難しい。個人の規範意識に頼るしかない」と話す。
9管は毎年7、8月に海岸を歩き、酒を飲んでいる人に海に入らないよう呼びかけているが、海開き前の6月の暑い日に飲酒して海に入り、事故に遭うケースもあるという。9管幹部は「注意喚起を続けているが、現状での対策には限界がある」と頭を抱えている。
島も含めて計635キロの海岸がある新潟県には、全国でも上位の約60もの海水浴場がある。遊泳客の安全確保は、9管の重要任務だが、マンパワーには限りがあるのが現状だ。
小型船舶について、京都府は2014年に飲酒操船などを禁じる条例を制定。警察や海保の努力義務が盛り込まれたことで、積極的に指導・警告できるようになり、水難事故の発生件数が減少した。東京都では昨年7月、全国で初めて、罰則がある酒気帯び操船禁止条例を施行した。
事故抑制につながることを期待して、条例制定や罰則強化の必要性を指摘する声は県内でもある。それも含めて、どうすれば海水浴客の意識を向上させることができるか、考える必要がある。(梅林澄人)
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