飛散量が少なくても危ない“凶悪化する花粉”対策のポイント
都内では約2人に1人がスギ花粉だといわれる。近年、問題視されているのが都心部での花粉の「凶悪化」だ。花粉の凶悪化にいち早く着目し、研究を行うのが埼玉大学大学院理工学研究科の王青躍教授。
「スギが大量に生える山間部と市街地では、山間部の方が花粉症の有症率が高くなるはず。しかし実際は、市街地の方が有症率が高い。山間部と市街地の差といえば、大気汚染になります。私は大気汚染の研究をしていたこともあり、大気汚染と花粉を関連づけて考えるようになりました」
文科省の科研費などによって開発した特殊な計測技術によってたどり着いたのが、大気汚染による花粉の凶悪化だ。3つのポイントがある。
■膨張して爆発
「花粉症の発症原因は、花粉の中に存在するアレルゲンです。スギ花粉の場合、Cry j1(クリジェイワン)、Cry j2(クリジェイツー)が主なアレルゲンです」
Cry j1は花粉の外に、Cry j2は花粉の殻の中に多く見られる。
二酸化窒素や硝酸塩などの大気汚染が花粉と結びつくと、花粉の殻が傷つき、かつ、花粉が水に溶けやすくなる。
「すると空気中の水分が花粉の中に染み込み、花粉が膨張。やがて爆発(破裂)し、殻の中のCry j2が外に飛び出してしまいます」
一方、Cry j1は、乾燥によって花粉から剥離したり、空気中の水分で花粉から切り離されて、やはり空気中を漂う。
「花粉の飛散量が少なくても、それとは関係なく、微細なアレルゲンが空中に漂う。吸い込みやすく、花粉症の症状が出やすくなるのです」
■微小化で肺胞へ
大気汚染と結びついて花粉が爆発することは前項で触れた。
「すると、花粉成分は非常に小さくなります。通常、花粉は直径30マイクロメートルですが、私の計測では最小0.06マイクロメートルと、PM2.5(2.5マイクロメートル)よりも小さくなっていました」
王教授は、花粉成分の大きさを13段階に分けて、人体呼吸器系のどの部位に届くかを調べた。
結果、鼻や喉は4.7〜11マイクロメートル、気管支は2.1〜4.7マイクロメートル、肺胞は2.1マイクロメートル以下で存在。そして爆発で0.06マイクロメートルまで微小化した花粉は肺の奥深く、肺胞までに届くことを突き止めた。
「花粉が大きければ、目のかゆみやくしゃみ、鼻水、鼻づまりで終わり、症状も深刻化しない。しかし肺胞まで届けば、喘息や気管支炎と同様の症状が出る。花粉と関連づけて考える医者は少なく、症状もなかなか良くならない。さらに、アレルゲンで肺が傷つくと、大気汚染に含まれる発がん物質のダメージを受けやすくなります」
喘息や気管支炎で薬を飲んでも良くならない人は、花粉との関係を疑った方がいい。
■アレルギー性の増悪
「花粉が大気汚染と結びつくと、化学変化でアレルギー性が増す。大気汚染がない場所の花粉と、国道近くで大気汚染の影響を受けている花粉を比較したところ、大気汚染の影響を受ける花粉はアレルゲンと人体内の抗体の結びつく力が1万倍強かった。これは、アレルギー症状が強く出ることを意味します」
花粉対策は、花粉の飛散量ではなく、大気汚染との関係を意識して行うべき。
さらに、花粉対策は、花粉“症”対策だけにあらず。現在、花粉症でなくても、PM2・5用のマスク、うがい・手洗い・鼻洗い、屋内の加湿器などの複数の花粉対策を徹底すべきだ。
| カテゴリー 222掲示板 | 2019年2月6日 17時55分 |