【市販薬との正しい付き合い方】
OTC医薬品やスイッチOTC医薬品の中でも身近な「解熱鎮痛薬」には、「商品名が同じでも成分が異なる」ことがあります。これは薬を選ぶ患者さんだけでなく、医療者側も困惑させます。OTC医薬品を飲んでいる患者さんの治療にあたる際、重篤な事故につながる可能性があるからです。急性期病院に入院する患者さんの目的は大半が手術です。その際、患者さんが飲んでいると手術ができない薬があります。手術前に「休薬」が必要なものがあるのです。
例えば、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)は出血リスクが高くなるため術前に休薬しなくてはなりません。医療用医薬品である「バファリン配合錠A81」(アスピリン配合錠)はこれに該当しますが、市販薬=OTCのバファリンはいくつも種類があり、同じバファリンでも該当するものとしないものがあります。
「バファリンA」の有効成分はアスピリンなので該当しますが、「バファリンEX」はロキソプロフェン、「バファリンルナJ」はアセトアミノフェンで該当しないのです。つまり、バファリンを飲んでいる患者さんが手術を受ける場合、「どんな種類をいつから飲んでいるのか」をきちんと医療者に伝えなければ、手術を延期せざるを得なくなったり、リスクの高い状態で手術をしなくてはならなくなってしまい、患者さんに不利益が生じてしまうのです。
そうしたリスク回避の方法として、OTCであっても、すべてお薬手帳に記載することをおすすめします。薬の商品名やいつから飲んでいるかなどを記載したお薬手帳を医療者に見せることによって、正しい情報共有ができるのです。これは医療者側のミスを防ぎ、患者さん自身を守ることにつながります。
病院を受診する際、とりわけ手術、抜歯、検査を受ける前は、飲んでいる薬について十分な情報共有を行うことが必須です。
(神崎浩孝/医学博士、薬剤師)
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