「風邪に抗菌薬を処方」効果なし…患者は評価も
抗菌薬(抗生物質)は、ウイルスが原因の風邪に効果がないにもかかわらず、一般の人の3人に1人が「処方するのは良い医師」と思っていることが、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)による意識調査で分かった。こうした患者の意向に沿って処方する医師が6割に上るという別の調査結果もあり、医師、患者の双方が抗菌薬の安易な使用を助長している実態が浮かび上がった。
抗菌薬は細菌の増殖を抑える働きを持つが、乱用するとかえって薬が効かない耐性菌の出現につながる。鹿児島大病院でも今月、耐性菌に感染した患者の死亡例が明らかになった。厚生労働省は2年前、使用量を減らす行動計画をまとめ、風邪の治療ではできるだけ使わないよう求めている。
同センターは2月、インターネットを通じて、一般の人の意識調査を実施。回答者3192人のうち、43・8%が、抗菌薬は風邪やインフルエンザに効くと誤解していた。風邪に抗菌薬を処方する医師を良いとした人は33・3%に上った。
一方、日本化学療法学会と日本感染症学会は2月、診療所の医師を対象に調査。274か所から得た回答を集計したところ、医師の6割は、風邪の患者や家族が望んだ場合、抗菌薬を処方するとした。内訳は「希望通り」が12・7%、「説明しても納得しなければ」が50・4%だった。
国立国際医療研究センター病院の 具 芳明医師は「医師、患者ともに意識を変える必要がある」と指摘する。