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ズッキーニやヘチマなど「ウリ科野菜」中毒の危険性

ズッキーニやヘチマなど「ウリ科野菜」中毒の危険性


 夏野菜が美味しい季節だが、ズッキーニなどウリ科の野菜により、嘔吐や下痢などの中毒症状を起こす危険性があるとネット上で話題になっている。ウリ科の植物がなぜ中毒を起こすのか、原因物質には意外な秘密と可能性があった(※注意喚起の意味で書いた記事であり、生産流通しているウリ科の野菜の危険性はかなり低いことを書き添えておく)。

苦み成分ククルビタシンとは

 中毒の恐れはズッキーニ以外の同じウリ科の野菜であるキュウリ、スイカ、ヘチマ、トウガン、ゴーヤー(ツルレイシ)、メロンなどで起きる危険性があり、その原因物質はステロイド(Steroid)の一種、ククルビタシン(Cucurbitacin、A~T)だ。苦味成分であるククルビタシンは、アブラナ科の植物や香木の沈香、ある種のキノコ(ベニタケやワカフサタケの仲間)、海の軟体動物にも含まれる(※1)。
 このククルビタシンによって中毒症状が引き起こされ、これまでもウリ科の植物を食べたことによる食中毒の事例は多い。
 2001年には沖縄で自家栽培のヘチマを食べて30分後に嘔吐し、下痢が止まらないという人が出た。この場合、ククルビタシンの量は少なかったが、それでも中毒症状を引き起こした。
 2007年には、長野県で自家栽培したヒョウタンの塩漬けを食べた直後に嘔吐し、吐血と下血して救急外来へ駆け込んだ事例が報告されている。これはヒョウタンに含まれるククルビタシンBによる十二指腸炎と診断された。
 2008年には自家栽培したヘチマを食べ、これまでに経験したことのない苦味を感じて保健所に相談した事例が沖縄でいくつか報告されている。沖縄といえば同じウリ科のゴーヤーだが、味噌煮にしたヘチマや煮物や汁物にしたユウガオ(チブル)も食べる。
 沖縄県では、ゴーヤーより苦いヘチマやユウガオは中毒の危険性があるので注意するように喚起しているが、ゴーヤーになれているせいか、多少苦くても食べてしまうケースが多いようだ。
 ちなみに、ゴーヤーの苦味はククルビタシンもあるが、そのほとんどは中毒を引き起こさないモモルジシン(momordicin)によるものだ。ただ、ゴーヤーの実や種子には妊娠阻害や流産の誘発作用などが報告されており(※3)、通常の食用で適量を食べる分には安全だが、妊娠を希望している場合や妊娠中の摂食は避けたほうがいいだろう。
 2014年には岡山県でズッキーニを食べた男女14人が、下痢や腹痛などの食中毒症状を訴えていたことがわかっている。同年、岡山県は「強い苦味のあるウリ科植物にはご注意ください」という注意喚起を出した(※3)。

無害化されているはずの野菜だが

 岡山県の警告では、通常の場合、キュウリやスイカ、メロン、ズッキーニなど食用のウリ科の植物には、ククルビタシンは含まれていないとしている。これらの野菜は、長い品種改良の結果、苦味成分を除外し、ククルビタシンを含まないように栽培されてきたからだ。
 だが、連作や水やりの不足、温度変化、野生種や観賞用ヘチマなどからの花粉飛来や昆虫の受粉による交雑などの要因で、ククルビタシンを多く含むものができてしまうことが希にあるようだ。筆者もメロンを食べた際、ヘタに近い部分に妙な苦味を感じたことがある。
 2018年には、フランスでカボチャの(Squash)スープを食べたフランス人が中毒になり、嘔吐や下痢、1週間後に頭髪や陰毛の脱毛の症状を起こしたという2症例の報告が出された(※4)。フランスではカボチャを多く消費するが、2012~2016年にフランスの毒物管理センターに報告されたカボチャ中毒は353人に上るという(※5)。
 日本でも最近(2018年5月)、長野県がウリ科植物に注意喚起をし、カンピョウの原料になるウリ科のユウガオで食中毒の危険性があるとしている(※6)。ユウガオはスイカなどを栽培する際の接ぎ木の台木に使用されることがあり、この台木からとれるユウガオの実にククルビタシンが多く含まれる場合があるそうだ。
 ククルビタシンが、ウリ科などの植物の実に存在する理由は多様だ。この物質が、ある種の昆虫を惹きつけるアレロケミカル(Allelochemical、別種間の情報伝達物質)ということはよく知られていた(※7)。そのため、虫の誘引剤や交配混乱剤、除虫剤などにも応用されている。
 植物の持つアルカロイド(Alkaloid)やステロイドは草食動物に食べられないように進化してきたために備わったと考えられているが、ウリ科の植物のククルビタシンの苦味もおそらく同じ目的で含まれるようになったのだろう。
 キュウリの原産地は中東と考えられ、その後、東西へ伝えられて日本でも古くから食用の野菜になってきた。だが、ククルビタシンによる苦味があったため、キュウリの場合は塩もみなどをして苦味を弱めるような調理法が発達する。
 キュウリ(Cucumber)の遺伝子を調べた研究(※8)によれば、野生種の苦いキュウリがこれまで4段階を経て品種改良され、食用になったことがわかった。この研究では、キュウリの苦味が葉と実の遺伝子に分けられた結果、実のほうに苦味が少なくなったという。

中毒を起こす植物

 良薬は口に苦しなどというが、薬は毒でもある。毒をもって毒を制すというのが薬理的な作用の一つで、ククルビタシンを含むウリ科の植物(マクワウリ、アマチャヅルなど)は古く漢方などに利用されてきた(※9)。最近ではククルビタシンに抗がん作用や抗腫瘍作用があり、分子標的薬に応用できるのではないか、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌に使えるのではないかと盛んに研究されている(※10)。
 人類は農耕を始めて以来、野生の植物を何とか食べられるように改良してきた。だが、植物には本来、食べられないように、食べられるのなら自らの種を広めようという機能がある。
 有毒な野生種を食用の植物と見間違う場合も多い。
 2018年7月23日には北海道でイヌサフランの球根(鱗茎)をジャガイモと間違えて食べて食中毒で亡くなった人が出た。イヌサフランには有毒なアルカロイドの一種、コルヒチン(Colchicine)が含まれ、呼吸困難などの症状を引き起こす。
 ほかにもニラに似たスイセン(ヒガンバナ・アルカロイド)、フキノトウに似たナス科のハシリドコロ(ヒヨスチアミン、Hyoscyamineなど)、セリに似たドクゼリ(シクトキシン、Cicutoxinなど)など、間違えやすく毒性の強い植物は多い。トマトにもナスにも中毒作用を引き起こしかねないアルカロイドなどの物質が少量だが含まれている。
 もちろん、市販されている野菜のほとんどは安全だ。ウリ科の植物などに含まれるククルビタシンは検出法が開発されつつある。
 だが、キュウリやズッキーニ、ヘチマなどを食べる際には、切り口を少しなめてみて、もしも強烈な苦みがあり違和感があったらすぐ食べるのは避け、保健所などに相談したほうがいいだろう。

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