赤ちゃん自身の「発達しようとする力」をうまく引き出すにはどうしたらいいのでしょうか。子育て実用誌『AERA with Baby スペシャル保存版 早期教育、いつから始めますか?』の中から、最新の赤ちゃん研究の成果を踏まえて、「赤ちゃんの脳を活性化する方法」を紹介します。
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生まれたばかりの赤ちゃんは何もできない無力な存在。だから親がいろいろと手をかけてあげなければ。そう思っているママやパパは、多いでしょう。
日本赤ちゃん学会理事長で、同志社大学赤ちゃん学研究センターの小西行郎先生は、そんな思いこみに基づく育児は「脳の発達によくない」と言います。
「赤ちゃんには自発的に学習し、発達していく力が備わっていることがわかってきました。脳の発達には、赤ちゃんがやろうとすることを邪魔しないことが重要です」
生後1歳未満の赤ちゃんを対象に視知覚能力の発達を研究する中央大学の山口真美教授によると、生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.02ほどです。
大人の近視のように近くに寄れば見えるわけではありません。赤ちゃんは視覚情報の処理能力が未熟で、例えていうなら、近づいても遠ざかってもピントがずれてしまう、壊れたカメラ。ただ、
「ピンボケでも動きはわかります。赤ちゃんは顔が大好きなので、表情豊かに話しかけてあげてください」(山口教授)
この頃は、髪形やメガネなどのわかりやすい特徴でママやパパの顔を覚えていますが、生後5〜6カ月頃になると目や鼻で顔を記憶できるようになり、視力も0.2程度まで発達します。
この時期のポイントは、ママやパパが正面からしっかり赤ちゃんを見てあげること。山口教授の研究で、赤ちゃんは生後7〜8カ月くらいにならないと横顔を顔として認識せず、脳も反応しないことがわかっています。横顔だと目が一つしか見えないため、「顔」として処理できないのです。
正面から顔を見て視線を合わせれば、赤ちゃんの脳は活発に反応します。赤ちゃんをひきつけているのは、実は人間の「白目」。
「白目があるのは人間だけ。白と黒はコントラストがはっきりしているので、視力が低くても見えるのです」(同)
赤ちゃんは目が合うと、しげしげとこちらを見つめてくれます。ママやパパもうれしくて、より積極的に視線を合わせたくなりますね。山口教授はこれを、赤ちゃんが親として成長するきっかけを与えてくれる行為だと考えています。
「視線を合わせることは、コミュニケーションの土台。スマホ片手に赤ちゃんのお世話をして横顔ばかり見せるのではなく、真正面から向きあってコミュニケーションすることが大切です」
最新の赤ちゃん研究では、赤ちゃんの見える色や好きな形などもわかってきました。そこには、絵本やおもちゃ選びのヒントが詰まっています。
●認識できる色が増え目の前には豊かな世界
赤ちゃんは生まれたときから色が見えていますが、明るさの違いを見分けるほうが得意です。やがて、色を認識する力が発達し、生後2カ月頃には赤と緑、生後4カ月頃には青と黄色の違いがしっかりわかるようになっていきます。
これまでは、言葉を覚えた段階で違いを区別すると考えられてきましたが、山口教授らの研究で、言葉を覚える前の生後5〜7カ月の乳児が色を見分けていることがわかりました。
根拠とされるのは、脳の色を認識する働きがある部分の血流が増えて、脳活動が高まったこと。
山口教授は言います。
「言葉を知る前の赤ちゃんにも、豊かな世界が広がっているのです」
赤ちゃんに見えやすい、「好きな色」ベスト5を山口教授に挙げてもらうと、1位から青、赤、紫、オレンジ、黄色。どれもはっきりした、大人にはちょっとキツく感じるような色ですね。形や模様も、ギザギザ、とげとげ、しましま、ぐるぐる、といった特徴的なものを好みます。
赤ちゃんへのプレゼントには、優しい、淡い色合いのものを選びがちですが、これだと見えていない可能性もあります。欧米のおもちゃのようにカラフルなものがいいですね。
色と同様に、立体の認識もぐんぐん発達します。最初は平面の世界しか見えていませんが、生後7、8カ月の頃には、立体を認識したり、質感がわかるようになったりします。山口教授らの研究では、7、8カ月の月齢の赤ちゃんは、金色を特別な色と認識し、好むこともわかっています。(編集部/深澤友紀)
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