北海道岩見沢市の小中学校で2月に発生した集団食中毒は、給食のブロッコリーサラダに付着したサルモネラ菌が原因だった。 サルモネラ菌による食中毒は食品中で菌量が増殖しやすい夏に多いとされるが、エアコンで温度管理された室内では季節に関係なく起きる可能性がある。 乳幼児や高齢者など抵抗力が弱い人では命にかかわることもあり、調理のときは十分な注意が必要だ。(平沢裕子)
◆しっかり洗浄を
岩見沢市の集団食中毒の原因とされたブロッコリーサラダは、ゆでたブロッコリーとニンジンを粗塩ドレッシングであえたもの。 市の調査では、サラダの具材をあえるときに使った調理器具からもサルモネラ菌が検出されている。 器具に付着していた菌がサラダを汚染したとみられ、器具の洗浄、消毒が不十分だった可能性が指摘されている。
同じ日にはサラダをあえている近くで、生の鶏肉の調理もしており、この鶏肉からの2次感染の可能性もある。
内閣府食品安全委員会事務局評価課専門官の白銀(しろがね)政利さんは「サルモネラ菌による食中毒は以前に比べて減ってきているとはいえ、年間約2千人の患者が報告されている。 家庭で多いのは、食材を触った手から別の食品に2次感染し、それを食べた人が食中毒となるケース。 まな板や包丁などは洗浄しても手洗いが不十分な人は多く、それが感染原因となっている」と指摘する。
食中毒予防のためには、肉や卵などを取り扱うときは取り扱う前と後に必ず手指を洗う。 インフルエンザ予防のための手洗い同様、せっけんを使って洗った後は流水で十分に洗い流すことが大切だ。
◆器具を使い分ける
生肉を切った後の包丁やまな板は、洗った後に熱湯をかけてから使う。 包丁やまな板は肉用と野菜用を別々に用意して使い分けると、より安全といえる。1つのまな板や包丁を使い回す場合は、先に野菜を切り、肉や魚は後で切るようにするといい。
サルモネラ菌は熱に弱く、加熱を伴う調理過程でほとんど死滅する。 ただ、加熱が不十分だと生き残ったサルモネラ菌が増殖してしまう。 鶏肉のミンチの3割で菌が確認されていることもあり、ハンバーグやつくねなどはしっかり火を通すことが大切だ。 目玉焼きなどの卵料理は黄身が半熟のことも多いが、時間をおくと菌が増えるので調理後はなるべく早い時間に食べた方がいい。
白銀さんは「食中毒は、乳幼児や高齢者の場合は重篤(じゅうとく)になりやすいので注意が必要。 また、サルモネラ菌は食品だけでなく、ペットからも感染し、ペットの亀から感染した子供が死亡した例もある。 ペットを飼っている場合、口移しで餌をやらないのはもちろん、触ったら手を洗うことを習慣づけてほしい」と話している。
■少量では発症せず
サルモネラ菌は、人や鶏、動物の消化管に常在菌として存在している細菌。 汚染された食品やペットのふんなどから人に感染すると、8~72時間後に下痢や発熱、腹痛を起こす。 症状は4~7日続き、激しい下痢による脱水のために入院治療が必要となる場合もある。 食品安全委員会によると、平成11~20年までの10年間で45人の死亡が確認されている。
近年、患者が増えているカンピロバクターや腸管出血性大腸菌(O157)は少量の菌でも食中毒を起こすが、サルモネラ菌は100万個以上でないと発症しないとされる。 このため、菌がいることが多い卵でも、冷蔵庫などできちんと保存された賞味期限内のものなら生で食べても食中毒を起こすことはほとんどない。
≪主な食中毒予防のポイント≫
・肉や野菜などの生鮮食品は買い物の最後に購入し、まっすぐ持ち帰る。 家に着いたらすぐに冷蔵庫に入れる。
・冷蔵庫や冷凍庫は詰めすぎない。 7割程度を目安に。
・肉などの汁が、生で食べる野菜や果物にかからないようにする。
・市販のカット野菜も食べる前によく洗う。
・包丁、食器、まな板、たわし、スポンジなどは使った後、すぐに洗剤と流水でよく洗う。
・温かい料理は65度以上、冷やして食べる料理は10度以下を目安に。
・調理前や調理後の食品は室温に長く放置しない。
(厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」より抜粋)
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