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保育園は「働く親のため」じゃない 待機児童問題に必要な発想の転換#保育園に入りたい!

■「日本の政治家は、未だに『(保育園は)一部の働きたい親のためのもの』と言っている」

「一番言いたいのは保育園のイメージを変えないといけないこと。年輩の方がこの問題になんで関心を持ってくれないかというと、保育園はかわいそうな子どもが行くところというイメージがあるから」
減らない待機児童、足りない保育園。
これほど訴えても、なぜまだこの問題は解決しないのか。
3月7日、待機児童問題を考えるイベント「#保育園に入りたい を本気で語ろう」が東京・永田町の衆議院第2議員会館で開かれた。
ディスカッショントークには、待機児童問題の解決に取り組んできた識者らが登壇。保育園が増えない具体的な理由は何なのか、どのように声を上げていくことが必要なのかなど、いくつかの論点が交わされた中、筆者が特に印象に残ったのは冒頭で紹介した言葉だ。これは、日本総研調査部主任研究員の池本美香さんの発言。
池本さんは議論の締めくくりとしてこう口にしたが、保育園のイメージに人によって差があることは、ディスカッションの途中でもたびたび触れられていた。病児保育を手がけるNPO法人フローレンス代表・駒崎弘樹さんはこう口調を強めた。
「日本の政治家は、未だに『(保育園は)一部の働きたい親のためのもの』と言っている。(諸外国と比べ)議論が30年ぐらい遅れている」
そもそも認可保育園の利用基準には「保育に欠ける」家庭であることという要件があった。これは「保育の必要性」という言葉に見直されつつあるが、根強いのは、保育園は幼稚園と違い、「教育」を行う場所ではないというイメージだ。保育士は年齢ごとのカリキュラムに従って子どもの成長を見る専門職だが、幼稚園が文部科学省幼児教育課の管轄する「教育施設」である一方で、保育園は厚生労働省児童家庭局管轄の「児童福祉施設」と位置付けられている。

■「実の親から”そこまでして働く必要があるのか”と言われた」

筆者は共働き家庭に育ったため保育園に通っていたが、当時(1980年代前半)は専業主婦世帯が共働き世帯を上回っていた時代。「共働き=妻が働きに出なければならない事情のある家」であり、「保育園=子どもに手をかけられない家が利用する場所」というイメージで見られていくことを何となく感じていた。当時の子どもは親世代になり、当時子育てをしていた人たちは今、孫を持つ世代になっている。
世代によっても異なる「保育園観」について、イベントに子ども連れで参加していた女性たちからは、こんな声が聞かれた。
「生後6カ月で子どもを預けたら、姑は『0歳児から入れるのね。今は0歳児から入れないと入れないって聞くからしょうがないけれど』って。親世代とのギャップは感じる」(30代/保育士)
「まさに自分の親がそういう(保育園はかわいそうという)考え。『そこまでして働く必要があるのか』と親でも言う」(30代/マスコミ)
今と昔では時代が違う。子育て世代が、コツコツとそう言い続けるしかないのだろうか。

■ノルウェーでは「子どもにとって何が良いのかと考えた結果として保育園があった」

駒崎さんは「これは待機児童問題ではなく、官製失業問題」とも言った。保育園に子どもを預けられず失業する。保育園の空きがないから申し込みすら諦めて退職する。そんな状況を抱える若い親たちと、保育園は「一部の働きたい親のためのもの」と考える人のギャップは、ひたすら大きい。
ディスカッションの冒頭では、「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」代表の天野妙さんが、署名活動やロビイング、イベントなどを通じて自治体に働きかけ、ようやく保育園建設計画が始まったものの、近隣住民の反対で事業者が撤退したケースを紹介した。
政治家がイマイチ関心を示さないこと、なかなか予算がつかないこと、保育園を利用したい親の気持ちが理解されづらいこと、近隣住民から反対が起こること。これは、保育園が「一部の働きたい親のためのもの」と認識され、「福祉施設」と位置付けられていることと無関係ではないように思える。
池本さんは、海外のケースをこう紹介した。
「ノルウェーの場合は(希望しない人に対しても保育園に入ることを奨励するほど保育園政策が進んでいたが)、保育園へ行かない選択肢もあるのではないかということで、行かない子どもに対しても国が手当てを出す制度があった。でも、(家の中だけで育てられると)他の子どもと会う機会が減ったり、親のストレスが増えたり。子どもにとっていいことがないので、保育園に行ける権利を子どものために与えようということになった。実際に子どもにとって何が良いのかと考えた結果として保育園があった」
保育園は働く親のためではなく、子どものため。「保育園は働く親のためにあるもの」「預けられる子どもがかわいそう」と考える人もまだ多い日本とは、全く違うと感じる。
保育園を幼児教育の場と捉える必要性について、駒崎さんも言う。
「0~5歳までの保育や幼児教育がどのような効果を子どもにもたらすか。アメリカでは30年後を追跡調査して、良質な保育・教育を受けた子どもたちは犯罪率が低く所得が高かったと結果が出ている。この乳幼児期に国家予算を投資することが、子どものためにも社会のためにもなることがわかっている」
「本当は小学校の定員分、保育園を作ればいい。最初から。諸外国では保育園が幼児教育、義務教育としてあるのだから。日本ではいまだに『限られた人たちのための施設ですよ』という考え方で、低い目標値で作っている」
だからいつまでたっても、需要に数が追い付かない。

■「保育園は働く親のためではなく、子どものため」への一歩を

保育園は働く親のためではなく、子どものため。その発想の転換は、保育園を増やすために必要と感じる。しかし一方で、本当に「子どものため」になるためには、質の確保も重要だ。池本さんは、冒頭の発言をした後でこう言った。
「スウェーデンは専業主婦がほとんどいない国。スウェーデンの保育園を見学してみたら、これだったら保育園に預けるために働くのではないかというぐらい、設備も環境も素晴らしかった。本来はそのくらいに。保育園がかわいそうというイメージをなくすためには、質のことももっと考えないといけない」
保育園観のギャップについて話してくれた女性たちも、こう言った。
「認可と無認可に格差がありすぎる。本当は幼稚園を選ぶように保育園を選べたらいい。でもそれは贅沢なことだと思われている」(30代/IT)
「根底には保育の質の問題がある。保育園が成長に合わせて教育を行い、子どもの教育を促す教育機関と認識されれば」(30代/マスコミ)
質の確保が先か、保育園への認識が全世代で変わることが先か。ニワトリが先か、卵が先かのような話になりそうだが、少なくとも「一部の働きたい親のためのもの」という認識は過去のものとなってほしい。
みんなが当たり前に利用する場所、それが保育園。まずはその認識を。そして、保育園は何より子どものためになる場所。広くそう認識される未来を見たい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20170308-00068460/

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