高齢化が進む福島県の応急仮設住宅で、大学生が空き部屋に一定期間滞在し、避難者と交流する「いるだけ支援」が行われている。
自治会の解散や退去者の増加でコミュニティーの崩壊が懸念される中、避難者からは「団地全体に活気が生まれた」と喜ぶ声が聞かれる。
東京電力福島第1原発事故後、福島県浪江町の住民が避難する福島市の「北幹線第一仮設住宅」には、福島大1年の高坂夏美さん(19)と2年の佐々木翔太郎さん(20)が滞在する。特別の技能や資格を持たない2人が続けているのは、住民との日常的な交流だ。
2月上旬。朝8時半のラジオ体操の後、佐々木さんは集会所で80歳の男性と卓球で汗を流した。住民らとのカラオケ大会にも参加し、演歌を熱唱する。高坂さんは、女性たちと共にボランティアへのお礼の品として折り紙でようじ入れを作っていた。談笑しながら、一つずつ丁寧に折り、目標の120個を完成させた。
佐々木さんは「被災地のために何かしたい」と思い、支援に参加。大学近くの寮に住んでいるため、通学時間は片道40~50分と延びたが、「苦労はない。いろいろな住民の方と知り合えたことがうれしい」と話す。住人の鎌田豊美さん(68)は「若い人たちがイベントなどを手伝ってくれ、大変助かる」と感謝した。
「いるだけ支援」を担うのは福島大の学生団体。2015年6月から取り組みを開始。福島、二本松両市の仮設住宅各1カ所に延べ計16人の学生を送り込み、2~4カ月間一緒に暮らした。代表で4年の久保香帆さん(22)によると、健康上の理由で外出できない人を見つけ、生活支援相談員の巡回対象に加えてもらうなど、孤独死防止にも一役買っている。
ただ、取り組みは福島大に限られている。同大の鈴木典夫教授(地域福祉)は「大学だけで行うのは難しい。NPO法人などにも積極的に参加してもらいたい」と訴えた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170307-00000070-jij-soci