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「学習障害」が放置される、教育困難校の現実

「教育困難校」という言葉をご存じだろうか。さまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことだ。
大学受験は社会の関心を集めるものの、高校受験は、人生にとっての意味の大きさに反して、あまり注目されていない。しかし、この高校受験こそ、実は人生前半の最大の分岐点という意味を持つものである。
高校という学校段階は、子どもの学力や、家庭環境などの「格差」が改善される場ではなく、加速される場になってしまっているというのが現実だ。本連載では、「教育困難校」の実態について、現場での経験を踏まえ、お伝えしていく。

■社会に出る際の最低限のパスポート

 「教育困難校」にとって最大の存在意義は、何か。それは、どのような3年間を過ごしたかはともかく、生徒に高卒の「資格」を授与することであろう。現在の高校は、高校受験の際の学力によってきっちりと類型化され、それぞれのグループによって学力面や体験面、また、自己認識や自己肯定観の面でも実に多様となっている。極論すれば、高卒生に共通することは、高校という場にともかく3年間在籍し、各高校で定めた卒業に必要な単位を取れた、ということだけだ。

 今の日本では、アルバイトの場でも高校生以上、正社員での就職ではほとんどが高卒以上の学歴を求められる。「教育困難校」の生徒たちも、とにかく高卒という「資格」を取りたいと思っている。ただし、「できるだけ楽をして」という付帯条件もあるが。いずれにせよ、高卒という「資格」は、社会に出る際の最低限のパスポートともいうべき存在になっていることは、明らかな事実だろう。
「高卒」に意味はあるのか?
 大学が高卒生に求めるものは大学入試で一応わかる。しかし、高卒生を採用する企業は、どのレベルの学力や能力を求めているのだろうか。また、社会が高卒という「資格」に何を見ているのか、当事者である高校側も、どうも把握できていないのである。もちろん、高校教育は後期中等教育として、その目的や学習内容などは文部科学省が出す学習指導要領に定められている。しかし、「教育困難校」では、生徒の学力や学習意欲の問題から、日々の教育活動で学習指導要領の目的などを意識している余裕はまずない。

 一方で、大学入試の変化や高校制度の改革も相まって、高校の多様化も急速に進んだ。

 特に、大学入試の科目数減少や、推薦やAOなど新しい入試の導入によって、大学に入学してくる学生の低学力や学んだ科目の少なさなどが、かなり以前から問題視されていた。ようやく近年、文部科学省と大学関係者が中心となって高校教育の改革が図られており、そこでは、「高校教育のコアは何か」という問題や、高校教育の質の保証の問題が検討されている。しかし、その議論で、「教育困難校」の現状も十分に考慮されているのか、筆者は懸念している。

■「2割引きってなんですか?」

 昨年、筆者がある高校の就職希望者の指導を担当した際も、こんなことが起こった。就職試験の問題を見て固まっている女子生徒に、「どうしたのか」と尋ねた。すると、「この問題にある2割引きってなんですか?」と聞いてきた。少し驚きながら、「2割引き」を説明すると、「なんだ、20%オフのことじゃん。だったらそう書けばいいじゃん」と、友人と一緒に問題に対して怒っていた。
 確かに、高校生が出入りするショップでは、セールでもパーセントで表示しているようだ。しかし、100%=10割のことは、高校生になるまでにどこかの学校の授業で教わるはずだ。彼女たちの表情からは、自分がわからなかったことへの恥ずかしさはみじんも感じられなかった。高卒生の就職試験には、塩分濃度や仕入れ値・売値など割合を使う問題や、仕事算など古典的な問題がよく出る。しかし、少なからぬ高校生が試験に出たこれらの問題がまったく解けず、その惨状に驚かれた企業の方も多いだろう。
次ページは:「発達障害」が見過ごされている



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