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教育困難校の生徒は保育・介護の重要戦力だ

「教育困難校」という言葉をご存じだろうか。さまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことだ。
大学受験は社会の関心を集めるものの、高校受験は、人生にとっての意味の大きさに反して、あまり注目されていない。しかし、この高校受験こそ、実は人生前半の最大の分岐点という意味を持つものである。
高校という学校段階は、子どもの学力や、家庭環境などの「格差」が改善される場ではなく、加速される場になってしまっているというのが現実だ。本連載では、「教育困難校」の実態について、現場での経験を踏まえ、お伝えしていく。

■喜怒哀楽が激しい生徒が多いのはなぜか? 

 「教育困難校」には、感情が安定せず喜怒哀楽が激しい生徒が多い。これは、親や周囲の大人が、そのような態度で彼らに接してきたからだろう。周囲の大人が精神的な余裕を失い、次世代を育てる「親」や「大人」としてふさわしいか、というフィルターをかけることを忘れ、自らの感情を子どもたちにストレートに見せてきた結果なのだと思う。

 そのような家庭で育った彼らは、感情のコントロールが苦手で、しばしば、一時の激情に任せて他者に暴言を発したり、いじめや暴力に走ったりする。しかし、本質は非常にやさしく、弱者に対しての思いやりにあふれていると感じる。人は、挫折や思うようにならない苦しさを経験してこそ、他者にやさしくなれるというのは真実だと、彼らを見て実感する。

 筆者が経験した「教育困難校」での、ある日の出来事を紹介しよう。女子生徒1人、男子生徒2人が遅刻してきた。3人ともチャラいタイプの生徒で、「学校に来る途中でよいことをしてきた」と言いながら、悪びれずに席に着いた。
弱者への共感力が高く…
 数日後、外部の人から学校に礼状が届いた。差出人は高齢の女性だった。ある朝、彼女は入院中の夫に届けるため大きな荷物を持ってバス停で待っていた。バスが来て乗り込もうとしたが、大きな荷物が邪魔になり、ひざが悪い彼女はスムーズに乗り込めなかった。すると、後ろにいてスマホ片手にしゃべっていた高校生たちがやって来て荷物を持ち、女性を支えてくれたという。バスの中で、お礼とともに事情を話すと、彼らは「じゃあ、病院で降りるときまた手伝ってあげるよ」と言って、学校の最寄りのバス停を乗り越し、病院前のバス停で再度手伝ってくれたというのだ。彼らに名前を聞いても名乗らなかったが、制服の特徴を覚えていて、近所の人に高校名を教えてもらい、とりあえず学校宛てに礼状を書いたという内容だった。思いがけず、あの日の遅刻の真相が判明したのだ。

■素直に「人の役に立ちたい」

 バスや電車での通学途中で、自分が遅刻するのも顧みず、具合の悪い人やアクシデントに見舞われた人を助けたなどといったことは、「教育困難校」ではよく聞く話だ。自転車通学者の中にも、途中で自動車にひかれてしまった動物の死骸を見かけ、「ほかの車にこれ以上ひかれたらかわいそうだ」と考えて道端によけたり、埋葬したりして遅刻するといったことがしばしばある。

 「教育困難校」の生徒たちは、相手の迷惑にならないか、周囲の人がどう思うか、あるいは、そうすることが自分にとって損か得かなどを考える間もなく、瞬間的に自分の感情に従って行動する。そして、「誰かの役に立てた、何かの役に立てた」ということで大きな満足感を覚えるようだ。

 また、彼らの弱者への共感力、感受性の豊かさに驚いたこともある。修学旅行で海外に行く高校も増加したが、依然として沖縄が修学旅行目的地の第1位になっている。豊かな自然と多彩な体験活動だけでなく、激しい戦場になった彼の地を訪れることで、平和の大切さを実感してもらいたいと教員が考えることが理由のひとつだろう。

 費やす時間の多寡はあるが、どの高校でも旅行前に沖縄の歴史、特に太平洋戦争末期の沖縄戦のことを生徒に学ばせる。その際に、沖縄戦を扱ったテレビドラマや映画を見せると、「教育困難校」の生徒は、進学校や中堅校の生徒よりものめり込んで真剣に見る。日頃、勉強を拒否し授業に集中しない生徒たちは、最初はいつもどおり斜に構えた態度で見ているが、そのうちに顔や上体が上がりだす。

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