厚生労働省は11月27日、障害福祉サービスの利用者が65歳になり介護保険サービスの利用に移った結果、自己負担が約9倍に増えたとする調査結果(中間報告)を明らかにした。同日の社会保障審議会障害者部会に報告した。厚労省は、65歳を超えると介護保険の利用を優先する原則を維持する方針。障害者総合支援法の見直し議論では、高齢障害者の問題が大きな論点になっている。
調査は今年7~8月、全国1741市区町村に実施。11月までに889の自治体から回答があった。その結果、2014年度中に障害福祉サービスの利用を終え、介護保険利用を開始した1764人の実態が分かった。
それによると、介護保険への移行前の月の平均自己負担額は767円。これに対し、介護保険への移行翌月の平均自己負担額は7183円だった。
1764人の障害種別の内訳は「身体障害」(62%)、「精神障害」(20%)、「知的障害」(10%)。利用していた障害福祉サービスは「居宅介護」(66%)が最も多く、介護保険に移ってからは「訪問介護」(50%)の利用が最も多かった。
厚労省は、一律に介護保険に移すことのないよう自治体に通知を出しているが、実際には65歳を超えて移行を余儀なくされ、自己負担が急増する「65歳問題」が発生。これを不服とした障害者が市を相手どって裁判を起こす例もある。
2010年1月に国と基本合意を結び、和解した障害者自立支援法違憲訴訟団は、介護保険優先原則による自己負担の変化を調べるよう要請。厚労省は調査結果を今秋中間報告すると回答していた。
同訴訟弁護団の藤岡毅事務局長は「本来、負担を軽減すべき65歳を境に負担が激増する理不尽な実態の一端が浮かび上がった。国は今度こそ真剣に私たちの訴えを受け止め、このことで苦しむ全国の高齢障害者を救済すべきだ」としている。
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