社会福祉法人武蔵野会(本部=東京都八王子市、上野純宏理事長)は3日、罪を犯した障害者を支援する人の輪を広げることを目的とした公開セミナーを都内で開き、司法、福祉関係者ら約500人が参加した。東京都社会福祉協議会、日本障害者協議会の後援。
炭谷茂・恩賜財団済生会理事長が「ソーシャルインクルージョンの理念の推進」をテーマに基調講演したほか、刑務所出所者(刑余者)支援に携わる実践者がそれぞれの取り組みを報告するシンポジウムを開いた。
八王子医療刑務所に勤務する福祉専門官の鶴飼マリ子氏(社会福祉士、精神保健福祉士)は、刑期を迎え、療養の場を必要とする人を送り出す側の実践を報告。「社会での受け皿を作ることが課題だが、刑余者だけでなく受け皿として支援する人も孤立しがちだ」と話した。
刑余者をグループホーム(GH)で受け入れている社会福祉法人原町成年寮(東京都葛飾区)理事の笹生依志夫氏は「特別な受け入れ計画があるわけではない。本人に仲間を作ることが大切だ」と指摘。その上で、GHをバックアップするシステムが必要だとした。
同じく刑余者を受け入れている武蔵野会法人本部長の高橋信夫氏は「本会はこの分野で後発と思っていたが、社会福祉法人による受け入れは少ない。刑余者を正しく理解し、普通に受け入れるため共通の土俵を作らないといけない」と話した。
武蔵野会は1934年に国立武蔵野学院の外郭団体として発足した前史を経て、63年に社会福祉法人として認可された。現在、児童養護施設、障害者支援施設、特別養護老人ホームなど25施設を経営。職員は計960人。2009年度から毎年度、「人権」をテーマに公開セミナーを開く。社会福祉法人紫野の会(本部=東京都)が14年12月から進める「罪を犯した障害者等の支援者ネットワーク会議」に参加している。
■炭谷氏が講演「出所者ら働けるように」
刑務所出所者の累犯問題は深刻だ。一人の人間に貧困、病気などさまざまな問題が集中する。一方、地方自治体はそうした人への関心が薄い。積極的に対応すべきだ。社会福祉法人も制度の枠内にとどまっている。そんな現状では、(国会で継続審議になった)社会福祉法改正もやむを得ないが、本来は望ましい改正ではない。私は刑務所出所者など社会から排除されがちな人も対等な立場で働ける「ソーシャルファーム(社会的企業)」を作ろうと7年前から呼び掛けている。2000社が目標で、現在100社ほどある。済生会はこのほど、山口刑務所の受刑者向けのホームヘルパー養成講座にかかわった。私は働くことの支援が大切だと感じている。
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