毎年、5月下旬から7月にかけての我が家の恒例行事があります。
蛍狩りです。
場所は秘密、長岡市の郊外とだけ申し上げておきましょう。
次第にあたりが夕闇に包まれる頃。一つ、また一つと蛍が緑色の小さな光を放ち始めま
した。
「あっ蛍、…ここにも蛍」
はしゃいで、蛍を数えていた娘も息子もあまりの多さに諦めてしまいました。
「そこ、足元に気を付けてね」
「わかってるよ、蛍を踏んだりしないよ」
足元にも蛍、蛍、蛍…。
目の前をふわふわと漂う蛍、蛍、蛍…。
水田の畦はいつしか蛍のイルミネーションに彩られていました。
蛍の呼吸に合わせて緑色の光がゆらゆらと点滅する光景はまるで夢を見ているようです
。
辺りは蛙の鳴き声が響いています。
見上げると天の川が東の空高くたなびいています。
水田の向こうにはさそり座が昇ってきました。
「もうすぐ夏だね」
その後、娘の定期テストや天候が雨だったりして、何週間かブランクがあきました。
先日、久しぶりに娘と蛍を見に行きました。
蒸し暑いだけあって、今年一番の数の蛍の乱舞が堪能出来ました。
蛍を今シーズン初めて眺めた5月末から約一ケ月半。
辺りの様子も一変しました。
あれほど賑やかだった蛙の鳴き声がトーンダウンして、代わって虫の音が聞かれるよう
になりました。
南東の空に顔を出していたさそり座は南の空にかかり、東の空高く淡い天の川がたなび
いています。
「あれが織り姫星で、右下の星が彦星だよ」
七夕に晴れなんて珍しいことです。
「どうしてお父さんはここで蛍を見るようになったの?」
「お母さんとデートでここに来たんだよ。お母さんがとても喜んでくれてね」
「そっか…お母さんも天国からこの蛍、見ているのかな?」