近年、体温が36度未満の子どもが増えていることをご存じだろうか。高熱を出した時に比べて、体温が平熱より低い時はあまり気にならないかもしれないが、子どもの「低体温」は学力や人格形成にも影響するという。子どもの健康福祉に詳しい、早稲田大学人間科学学術院教授の前橋明氏に聞く。
※ここでの「低体温」は臨床医学上の定義とは異なり、「35度台の体温」を指す。
1990年代半ばを過ぎたころ、幼稚園などの先生がたから「だるそうで、集中力がない子どもが目立つ」との声が寄せられるようになりました。調べたところ、体温が36度未満の「低体温」の子どもが約15%いることがわかりました。
ヒトの体温には脳内ホルモンの働きが大きく関係しています。夜中の0時頃になるとメラトニンという成長ホルモンが分泌のピークを迎え、脳温を下げて体温が下がります。一方、明け方になると、元気や意欲を引き出すβ-エンドルフィンなどが分泌のピークとなり、脳温や体温を上げ、動けるようにしてくれます。
遅寝・遅起きで生活リズムが乱れると、これらのホルモンの分泌時間も後ろへずれ込み、午前中は低体温のままで、いわば寝ているのと同じ状態に。逆に、体温が低くなって眠くなるはずの夜には活動的になってしまいます。 朝起床できない→日中活動できない→夜ぐっすり寝られず動き回る……と、生活リズムは悪循環に陥るのです。
低体温は、体温調節を司る「自律神経」の働きが悪いことの象徴。生活リズムの乱れによる自律神経の機能低下は、子どもの学力や人格形成にも関連しています。私の研究室の調べでは、就寝時刻が夜22時以降の子どもの割合が大きい地域は、全国学力テストの正答率が低い傾向にありました。
自律神経は「生きる力」そのもので、主体的に考え、行動するためになくてはならない機能です。自律神経の機能を向上させるには、悪循環に陥った生活リズムを改善するところから始めましょう。
出典:[ベネッセ教育情報サイト]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150518-00010005-benesseks-life