いわゆる「引きこもり」と呼ばれる人たちの一定数は、この「シゾイドパーソナリティ障害」に該当する可能性があります。感情表現が乏しく、親密な人間関係を避け、文字通り自分の世界に引きこもる傾向があります。変人と思われることも少なくありませんが、猜疑製パーソナリティ障害と違って、相手に対して攻撃的になるのは、自分を侵害されたと感じた時だけです。普段は人畜無害な平和主義者と映ることが多いでしょう。このタイプは、自分の長所を生かすような仕事や生活への取り組みが望まれます。
引きこもりの一定数が該当する可能性が高い「シゾイドパーソナリティ障害」とは?
◆シゾイドパーソナリティ障害の特徴
対人接触を求めないこのタイプは、「孤独こそ最良の棲家」と考えています。天性の独身主義ともいえる人が多く、自分の世界を守ることを優先課題としています。静かで淡々とした生活を好み、贅沢や華美に走ることを嫌います。物質的なものより、精神的・内面的な価値に重きを置くため、世捨て人のような雰囲気があります。悪くするとホームレスになってしまう人もいるようです。禁欲的で、出世欲・名誉欲・性欲などから遠ざかり、俗世から離れて、大自然の中で自給自足の生活ができればと思っている人も多く、それを実行している人もいます。
◆普段は人畜無害だが強い反撃に出ることも
喜怒哀楽の感情は淡泊で、希薄な傾向がありますが、繊細で敏感なので、他者の強い感情は不快と感じる傾向にあります。気分の起伏やムラが少なく、毎日同じ生活を続けられるので、大きな仕事を成し遂げることもあります。一方で、不当に追い詰められると重いがけない反撃をし、容赦ない攻撃を加える場合もあります。人間関係が少ない職種では、能力を発揮し、集中して仕事に取り組めるでしょう。無口ですが思索的で、内面は豊かで、親しくなれば楽しい話相手にもなってくれます。半面、自分のこだわりには潔癖で頑固です。
◆シゾイドパーソナリティ障害の人への接し方
このタイプの人は他人に対して壁を作って自分を守っているので、不用意に接近されたり、いきなり過大な親しみを表示されたりすると脅威と感じてしまうことが多いようです。彼らの聖域に土足で踏み込むことは、できるだけ避けましょう。少し遠めの距離を保ち、感情はできるだけ抑えて、淡々と接するのが、安心した関係を築く出発点となります。ある程度親しくなったとしても、こちらが求めたり頼ったりすると、重荷に感じたり、うっとうしいと思われるので注意が必要です。デンマークの哲学者キルケゴールや、ウィトゲンシュタインは、このタイプと考えられています。同じ趣味やテーマを共有しながら、つかず離れず、同好の士あるいは協力者として、お互いの世界を尊重しつつ、侵犯しない関係を保つことが、上手くつき合っていけるコツとなるでしょう。
◆シゾイドパーソナリティ障害克服のために
自分の天性を否定したり、無理に変えようとするよりも、長所を生かして、気の合った少数の同行の士と関係を深めるのがいいといわれます。自然の中で孤独に取り組める研究者や農・牧畜・林業、測量士のほか、精神的な世界を追求する僧侶、芸術家、学者など、また、孤独な世界を好む意味でプログラマー、設計士など、シゾイドパーソナリティ障害の人に向いている仕事はたくさんあります。
●山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院博士課程修了、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
Mocosuku編集部
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000006-mocosuku-hlth