訓練を受けた犬が飼い主とともに高齢者施設などを定期訪問し、精神的な癒やしなどを提供する「ドッグセラピー」。堺市内を中心に、11年にわたってこうした活動を続けている12歳の長老のラブラドルレトリバー「さくら」が、利用者の人気を集めている。人間の年齢にすれば70歳前後の高齢犬だが、肝臓がんの手術も乗り越え、高齢者と交流。そのけなげな姿に、利用者たちも「大きいのに優しいね」「来てくれてありがとう」と目を細めている。
さくらは、堺市北区の訪問介護事業所「とも」の代表、中井廣信さん(65)が飼育している。
中井さんは「犬と一緒に社会貢献がしたい」とドッグトレーナーの資格を取得し、平成16年の事業所立ち上げ後、すぐにドッグセラピーのボランティアも始めた。
さくらは当初からの「相棒」で、知らない人に会ってもほえたりせず、「待て」「お座り」などの指示にも素直に従うなど、中井さんから訓練を受けている。
これまでに高齢者施設を中心に延べ300カ所を訪問。ドッグセラピーを実践している。
堺市中区の特別養護老人ホーム「やすらぎの園」では、依頼を受けた中井さんが、さくらやセラピー仲間とともに訪問。高齢者たちは、7頭の犬と一緒に、ボールを使ったキャッチボールなどのゲームを約1時間楽しんだほか、体をさすったり、言葉をかけたりして触れ合いを楽しんだ。
「普段は無表情な認知症の高齢者も、見たことのない笑顔を浮かべていました」と園の副部長、渡辺正弘さん(38)。「『犬が来るのなら』と参加してくれたデイサービスの利用者もいて、すごくいい刺激になりました」と話していた。
中井さんは「当初はさくら1頭と自分だけの活動でしたが、いまではドッグセラピーの仲間も増え、高齢者との交流の輪も広がりました」と活動の広がりを実感する。
その“主役”のさくらは平成25年4月、動物病院で定期健診を受けた際、肝臓がんと診断された。ソフトボール大の腫瘍を摘出する手術を受けたが、いまでは元気に回復している。
それでも中井さんは、さくらの体調を常に気遣っている。いつまでも健康な状態で一緒に活動することを願い、「さくらはセラピーに行くというと、うれしそうな表情をする。さくらと1日でも長くボランティアを続けたい」と話している。
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