乳がんの手術は全摘か温存かの選択ではなく、いかに自然な乳房を取り戻すかという段階に進んだ。保険適用が拡大し、より身近になった乳房再建術を中心に乳がん手術を紹介。
1.乳がんの手術 ここが変わった
乳がんの治療は、「乳房再建の技術が進み、保険適用範囲が広がった」「センチネルリンパ節生検の結果によっては腋窩[えきか]リンパ節郭清を省略できる」「術後放射線治療の技術の進歩」など、大きく進んできています。
乳がんの手術には、乳房を部分的に切除する乳房温存術と、乳房をすべて切除する乳房切除術があります。乳房切除術を受けた場合は、乳房の再建が可能です。再建に用いる素材によって、自家組織、あるいはインプラントを使う方法があります。自家組織の移植は2006年から、インプラントはおわん型が2013年から、しずく型が2014年1月から、健康保険の適用となっています。以前は温存術を希望するケースが多かったのですが、温存術を受けても乳房の形が損なわれる、左右非対称になる、局所の再発リスクが高まるなどのおそれのある場合などは、積極的に切除と再建を選択する患者さんも増加しています。
2.進歩した再建技術
自家組織を使った再建とは、自分のおなかや背中の組織を切り取り、胸に移植する方法です。最近は、筋肉は残し、皮膚、脂肪、血管のみを移植するDIEP法が可能になりました。自家組織を使うと、柔らかく温かい、自然な形の乳房をつくることができ、体型が変化したときも、再建した乳房も同じように変化します。「移植する組織を切り取るための傷ができる」「手術時間や入院期間が長い」などのデメリットもありますが、手術後は原則としてメンテナンスの必要はありません。
インプラントを使った再建は、乳房の大きさや形に合ったシリコン製の人工物(インプラント)を挿入し、胸のふくらみを作る方法です。胸の皮膚が十分に伸びるまではエキスパンダーという器具を大胸筋の下に挿入し、時間をかけて皮膚を伸ばしていきます。半年ほどしてからもう一度手術をして、エキスパンダーを取り出し、インプラントを挿入するのが一般的な方法です。1回当たりの手術時間や入院期間が短く、身体的な負担が小さい一方、「再建までに時間がかかる」「複数回の手術が必要」「10~20年でインプラントの交換が必要な場合もある」などのデメリットもあります。再建をするのか、再建を行うとしたら、どの方法を選択するのかなど、担当医や看護師とよく相談しましょう。
☆ センチネルリンパ節生検、術後の放射線治療については、
きょうの健康テキスト 10月号に詳しく掲載されています。
NHK「きょうの健康」2014年10月14日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20141014-h-001.html