秋は「実りの季節」。脂の乗った魚や肉、甘みを増した根菜や果物などが続々と出そろうシーズンです。食欲が減退していた夏場の反動で、ついつい食べ過ぎてしまう、というのも無理はありませんね。忘年会シーズンには胃もたれや胸やけに悩まされ、年末年始には体重増加に悲鳴を上げる……、というのは毎年のことかもしれません。
そもそも、秋になると急激に増えるこの食欲はどこからくるのでしょう?要因の1つは、外気温が下がるにつれて、身体が体温を維持しようと働くためといわれています。自然と基礎代謝量が上がるので、お腹が空き、食べようとするのです。ダイエットは冬場のほうが効果がある、といわれるのはこのためです。 2つ目には、食べ物が不足する冬を前にして、秋のうちにせっせと実りを収穫し貯蔵しておく本能が、私たち農耕民族にはあります。体にもしっかり脂肪を蓄えて、秋のうちに準備しておこう、そんな自然の摂理も関係しているといいます。 3つ目には、心のやすらぎや心身の安定に作用する神経伝達物質「セロトニン」の分泌が関与しているという説です。特に脳内で分泌されるセロトニンは、日光にあたっている時間によって分泌量が左右されるため、日が短くなる9月以降は、不足しがちに。それを補おうとして食欲が増したり、ぼーっとして眠くなったりするのです。
では、この食欲をコントロールして、上手に胃袋と付き合う方法はないのでしょうか。答えは、カンタン!適度に胃を休めることです。胃もたれとは、食べたものが十二指腸へなかなか排出されずに胃の中に長く留まっているために感じる不快感です。胃の中の圧力が高まったままなので、当然げっぷや胸やけといった症状も出てくるでしょう。
約2000年前に書かれた中国の古典医学書(医学大辞典)には、1日1回、暮れにだけ食事をとるとよい、という当時の養生法が記されています。皇帝や貴族たちは、たまにとった昼食のせいで、胸部と腹部とが圧迫されて苦しくなったので、それを「鼓脹(こちょう)」と呼んで病と捉えていました。 日本でも、江戸時代までは食事は朝夕の1日2回でした。だんだん「鼓脹」に慣れると、それを病気と考える人は少なくなり、いつの間にか重い病を誘発するもととなってきたのでしょう。 目に見える部分に比べて、身体の中にある臓器は、普段その状態を把握しにくいものです。ですが唯一例外として挙げられるのが、胃です。ほかが沈黙の臓器とするならば、胃は「じょう舌な臓器」といわれます。不調なときの原因が分かりやすく、対処のしやすいありがた~い臓器なのです。現代人が朝昼晩と食事をとるようになったのは、体格やライフスタイルの変化も関係しています。全く当時を再現するのはふさわしくないものの、秋のほんの一日、胃をいたわって「暮れの食事」を実践してみるのもいいかもしれません。
MocosukuWoman編集部
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