困窮する住民の相談に応じる東松島市の生活支援相談センター
貧困からの脱却を促す「生活困窮者支援制度」が、東日本大震災被災者の生活再建に一役買っている。国のモデル事業として 先行導入した被災自治体では、就労や金銭問題にとどまらず、地域住民との新たな関係構築といった幅広い悩みに対応。震災から3年半が過ぎ、被災者の長期的 な救済策として成果が期待される。
東松島市社会福祉協議会はことし4月、市の委託で生活支援相談センターを開設した。8月までに専任の職員5人が75人に対応した。
相談は「義援金や預貯金を使い果たした」「心理的ショックで働けない」など、被災地特有の内容が少なくない。センターは公共職業安定所、民生委員、弁護士会といった関係機関と連携し、自立プランを作成して解決に導いている。
同市内では、震災後に義援金の配分で減少した生活保護世帯が増加に転じた。センターの担当者は「経済問題は家族関係、心身の健康などが複合的に絡み合う。関係者との連携を強化して対応していきたい」と話す。
仮設住宅から新居に移転した被災者は、家賃やローン負担という新たな負担を背負うことになる。復旧の進展に伴い、各世帯の家計が行き詰まる可能性は高まる。
事業を所管する厚生労働省は「被災者向けの緊急的な相談窓口が縮小されても、今回の制度なら恒久的、長期的に対応できる」と説明する。
震災による地域社会の崩壊は、住民互助の機能不全を招いた。都市部に加え、農漁村部でも貧困問題が顕在化する懸念が深まっている。
宮古市などを対象に、岩手県事業を受託したNPO法人くらしのサポーターズ(盛岡市)は「困窮者を生まない社会づくりこそが大切だ」と強調している。
[生 活困窮者支援制度]2015年4月施行の生活困窮者自立支援法で、都道府県、市への窓口設置が義務付けられた。14年度は全国254自治体がモデル事業に 取り組み、岩手、宮城、福島の被災3県では16自治体が実施する。生活再建相談のほか、各自治体で就労サポートなどの支援メニューを構築できる。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140923_11021.html