東日本大震災で避難所を開設した長岡市は、避難所で収集した資料の整理に取り組んでいる。中越地震や中越沖地震の経験を生かし、行政機関が配布した資料をはじめ、被災者や支援した人々の様々な記録を残すことで、災害を多方面から後世に伝えていくことが狙いだ。
収集・整理を行っているのは市立中央図書館文書資料室。中越、中越沖の地震を機に関連する災害資料を収集して、災害アーカイブを構築している。
震災直後、市は23施設を一次避難所として開設、最大時で1千人を超す避難者を受け入れた。文書資料室によると、2011年4月5日から6月25日にかけて、閉鎖後の8施設で段ボール44箱、封筒11包み、写真393枚、計5527点を収集した。
資料は現在、05年に被災歴史資料の整理を目的に発足した市資料整理ボランティアらの協力で個人情報に注意しながら目録づくりを進めている。避難所事務室の日誌・メモや掲示物・配布物、被災自治体などからの文書、応援メッセージ、避難者が残したメッセージなどに分類できるという。
7月には市内で新潟歴史資料救済ネットワーク(事務局・新潟大人文学部の矢田俊文研究室)の新潟大生ら20人が3施設の資料を整理した。整理にあたって、作成した「目録カード作成の手引き」を配布。文書資料室の田中洋史さんが学生らに「(目録づくりの方法は)事例がないので、試行錯誤でやっている。皆さんからも提案があれば言ってください」と説明した。
例えば、セロハンテープ跡やマグネットの日焼け跡も、資料がどういう状態で掲示されていたのか知る手がかりになるとして、注意するようアドバイスした。
新潟大の災害・復興科学研究所副所長を務める矢田教授は「避難所は臨時で設けられたので、資料は捨てられてしまう。収集することが避難者の思いや生活を復元したり、ボランティアらの応援の証しにもなったりする。中越地震の時もそうだったように、復興へのバネになると思う」と話す。
国立国会図書館(東京)の東日本大震災アーカイブの担当者は、長岡の取り組みについて「課題となる人手をボランティアと一緒にやり、誰でもできるようマニュアルもつくっている。取り組みは先進的であまり例がない」と評価する。
同館が20日に岩手県庁で開く「書類・写真の整理・保存講習会」に、田中さんが招かれ、長岡の取り組みを紹介する。同館によると、昨年12月に初めて都内で開いた講習会で、参加者から具体的な整理方法を学びたいという声が出て、長岡の事例を参考にしてもらうことにしたという。(泉野尚彦)
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