音楽療法を研究している日比野音療研究所(新潟市)は、一般的なスピー カーでは再生できない高周波の音を発する音響機器を開発した。長岡技術科学大(長岡市)の研究グループが、耳では聞き取れない高周波の音に人間が「癒や し」を感じることを証明し、“お墨付き”も与えた。9月から売り出し、医療や介護の現場などで活用してもらう考えだ。
同研究所が売り出すのは、帆船の形をした音響機器「凛舟(りんしゅう)」。外装は、加茂市の桐(きり)だんす職人が県産の桐で作った。帆の部分は厚さ1・5~2ミリと薄く、そこから一般的なスピーカーでは再生困難な高周波音を発することができるのが特徴だ。
研究所代表で作曲家の日比野則彦さん(40)が凛舟の開発を手 がけるきっかけになったのは、2008年に知人女性が乳がんで亡くなったこと。病状が悪化して、好きだった音楽を聴けなくなるのを目にした。米国のホスピ スを訪れ、セラピストがハープで患者を癒やすのを見て高周波音の研究に着手。5年かけて昨年、完成させたという。
日比野さんは1月、完成した凛舟を同大の中川匡弘教授の研究室に持ち込み、実証実験をしてもらった。
20~70歳代の男女26人に、凛舟と一般的なスピーカーから それぞれ高周波音が多い楽器音などを聞いてもらい、脳波の変化を測定。その結果、スピーカーより凛舟の方が心地よく感じることが証明された。独自の基準で ある「快」が平均で36%上昇し、「不快」は同55%減少したという。
凛舟は現在、県内2か所の病院で試験的に導入されている。日比野さんは「医療、介護の現場で、音楽によって緩和ケアを手伝いたい。体や心の具合が悪い人を少しでも励ますことができたら」と話す。
中川教授は「効果が証明されたことで、これからは高周波成分の音をキーワードに新しい産業が興るだろう」と期待している。
9月3日に県内と富山県で先行発売され、来年からは全国で販売される予定。1台に約10時間の高周波音の多い音楽が内蔵されており、要望に応じて中身を充実させることができる。価格は40万円(税抜き)。問い合わせは同研究所(025・378・2414)へ。
http://www.yomiuri.co.jp/local/niigata/news/20140804-OYTNT50259.html