「子ども・子育て支援新制度」が2015年4月にスタートし、子育てにかかわる事業や仕組みが大きく変わる見込みだ。今秋までには新しい制度の下 での幼稚園・保育所の入園・入所に向けた手続きが始まるとみられるが、大半の自治体では移行に向けた準備の途中で、詳細を詰めきれておらず、市民への周知 も課題となっている。新制度で何がどう変わるのか。
「新制度で何が良くなるの?」「どの幼稚園が新制度に移行するのか」。7月中旬、横浜市が主催する新制度の住民説明会が開かれた。参加した母親たちからは質問が相次いだ。
新制度実施まで1年を切るが、制度の浸透度は今ひとつ。同市は全国に先駆け、5月から小規模な説明会を 開催している。市担当者は「詳細は検討中で現段階では回答できないことも多い。しかし対象世帯が多いこともあり、未定の部分も含めた現状を伝えることが重 要と判断した」と説明する。8月には電話相談窓口を設置し、新制度の周知や相談体制を整える予定だ。
参加した会社員の女性(30)は、5カ月の長女の育児休業中。「4月には仕事に復帰する予定。新制度は理解したが、長女が保育所に入れるかどうか心配だ。安心して子どもを預けることができる保育所が増えればいいが」と期待を込める。
●増える補助対象
新制度では、これまでの幼稚園、保育所、認定こども園に加え、0〜2歳を預かる小規模保育(定員6〜19人)や家庭的保育(保育ママ、定員5人以下)なども新たに国の補助対象として数を増やし、待機児童の解消を目指すとともに、保育や教育の質の向上を図る。
このほか、在宅で子育て中の家庭向けには、子育て支援拠点や一時預かり事業を拡充したり、小学生の預け先がなく、就業が困難になる「小1の壁」を解決するため、放課後児童クラブ(学童保育)を充実させたりする。
こうした事業には、消費税率が10%に引き上げられた際の増収分から、毎年7000億円程度が財源として投入される。これだけの財源が子育て施策のために確保されるのは初めてだ。
保育所や幼稚園などの施設や小規模保育、保育ママを利用するには、新たに、保育や教育の必要性に応じた「認定」を受けなければならない。認定は1号、2号、3号の3区分あり、区分をもとに利用先が決まる。
保育の認定を受けられるのは、保護者がフルタイムで共働き(もしくはひとり親)の場合だけでなく、パー ト勤務や求職活動中、職業訓練を含む就学中の人なども対象とする。これにより、保育の利用が現行制度よりも幅広く認められることになる。ただし利用できる 時間は、フルタイム就労を想定した「保育標準時間」(1日最大11時間)とパートタイム就労を想定した「保育短時間」(同8時間)に分けて認定される。
実際の手続きは、保育所などを希望する場合は、まず市区町村の窓口に認定を申請し、2号か3号に認定さ れたら、希望する施設を選び、市区町村に申し込む。希望の施設に空きがない場合などは、従来通り市区町村が利用調整をする。幼稚園の場合は、園に直接利用 を申し込み、入園の内定が得られれば、園を通じて市区町村へ認定の申請ができる。
基本の保育料は、国が定めた基準額を上限に、市区町村ごとに定める。保護者の所得に応じた額が設定され、現在の負担額とあまり変わらない見込みだ。
●施設で異なる対応
今ある施設はどうなるのか。まず、現行の認可保育所は、幼児教育と保育を一体に行う「認定こども園」に 変わる所と、新制度上の保育所にとどまる所に分かれる。認可外の保育施設や自治体独自の保育所は、職員配置や設備など新制度の認可基準を満たせば、認可施 設に移行することができ、移行すれば国の補助が入るため、利用料が安くなるとみられる。
幼稚園は、保育を必要とする子も受け入れる認定こども園に移行する▽新制度上の幼稚園になる▽新制度には移行せず、現行のまま−−の3通りが考えられる。いずれにしても、在園児への影響は最小限にとどまるよう配慮される見込みだ。
新制度の詳細は市区町村窓口に問い合わせる。広報誌、ホームページなどでも随時、情報提供されている。また、内閣府ホームページも参考になる。【細川貴代】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140731ddm013100018000c.html