振り込め詐欺を防ぐためにはどうしたらいいだろうか? メディアや金融機関らによって、高齢者への注意喚起や啓蒙活動が繰り返し行われているが、2013年の「特殊詐欺」被害総額は486億9325万円と前年比33.6%増と急増している。
そんな現状を打破すべく、兵庫県警は詐欺グループが使う電話回線を「集中架電作戦」によってパンクさせ、詐欺行為を行えなくさせるという大胆な作戦を展開、3月以降の被害額がゼロになっているとMSN産経westが5月19日に報じ、話題となった。
「集中架電作戦」は、市民からの詐欺に関する相談で入手した詐欺グループの電話番号に、被害者を装って電話をかけることから始まる。会話をして詐欺グループと断定できたら、架電システムや捜査員のマンパワーで電話をかけ続け、回線をパンクさせる。いわば、インターネットで行われるDoS攻撃(サーバに集中的に負荷を掛けてサービスを停止させる)を電話で行うというもの。兵庫県は、昨年の都道府県別被害額で全国ワースト6位、約20億円を記録しており、その対策として「効果は絶大だ」と言っていいだろう。
大胆な作戦ではあるが、マンパワーで回線を止める以前に、事業者経由で手順を踏んで回線を停止させる、またはすぐに逮捕することはできないのか? 振り込め詐欺事件を扱う小沢一仁弁護士は語る。
「捜査機関が携帯電話事業者に対し、いわゆる携帯電話不正利用防止法に基づく『契約者確認の求め(同法8条1項各号)』を行ない、これにより携帯電話事業者がした契約者確認(同法9条1項)に契約者等が応じないときは携帯電話サービスの提供を拒否(同法11条4号)するという法制度を利用したり、規約や約款に基づく契約の解除を促すなどして電話回線の利用停止措置をとることがあります。」(小沢弁護士。以下、同)
しかし、手順をおって、停止するという施策も行いつつ、集中架電作戦を行う意味は大きい。
「私見としては、法律や規約等に基づく電話回線利用停止手段があるのだから、本件のような集中架電が不要であるとは思いません。捜査員が直接集中的に架電することで、振り込め詐欺を実行することに対するより大きな抑止力が働くなど、単に電話回線の利用を停止するのでは得にくい効果を得ることが期待できるからです」
一方、事業者経由で回線所有者を特定してピンポイントで即逮捕というのは難しい。
「振り込め詐欺に用いられている携帯電話は転売等されている可能性があるため、必ずしも契約者(購入者)自身が振り込め詐欺の実行者であるとは限りません。そのため、少なくとも振り込め詐欺に利用されている携帯電話の契約者(購入者)であるという理由のみでは、当該契約者(購入者)を詐欺の嫌疑で逮捕することは困難だと思われます」
ちなみに、DoS攻撃で回線をパンクさせるのも一般企業にそれをやったら業務妨害だろうが、当然のことながら「振り込め詐欺は、刑法上保護に値する業務ではありません。したがって、業務妨害罪は成立しません」。
また、兵庫県警のほか、全国の警察では押収した名簿を活用し注意喚起なども行なっている。こちらについても、「捜査機関側が適法に取得した名簿を、振り込め詐欺被害の発生防止を目的として利用することは、正当なものとして認められると思われます」とのこと。
詐欺の手口は次々に生まれ、被害者もそのたびに出てくるもの。今後もより一層の対策によって、少しでも詐欺被害が減ることを願う。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140527-00649593-sspa-soci