1976年6月末、アフリカのスーダン南部のヌザラの町の綿工場で倉庫番の男性がエボラ出血熱を発症し、家族、医療関係者等に次々と感染し、さらにこの男性とは無関係の2例からも発症し、ヌザラとマリディの町で284名が感染し、151名が死亡しました。致死率は何と53%でした。
1976年にはザイール(現在のコンゴ民主共和国)の北部のヤンブク教会病院からそこに出入りしていた人と医療機関への受診によって家族、医療従事者に感染が拡大しました。WHOやCDCと言った国際機関による介入で終焉を迎えてからも、何度か発生しています。血液感染、接触感染が疑われ、注射器などを介して感染が拡大したと考えられています。その後も中央アフリカを中心に、発生がみられています。エボラウイルスは、発生した地域によって異なり、症状も少し異なります。
2014年現在においては、西アフリカのギニアで流行しています。現在、アフリカ旅行を予定している人は注意が必要です。
■エボラ出血熱の原因ウイルス
エボラ出血熱の原因は、「エボラウイルス」というウイルスです。フィロウイルス科のウイルスで、短径が80~100nm、長径が700~1500nmという、長細い形をしています。U字状であったり、ひも状であったり、植物のぜんまいのような形だったりします。
■エボラ出血熱の感染経路
ヒトも含めて、感染した動物の血液、分泌液、臓器、その他の体液に濃厚接触することによって感染します。
■エボラ出血熱の症状
エボラ出血熱の特徴は、インフルエンザのような症状と出血です。感染してから発症まで2~21日で、血液による感染は発症が早いです。発熱や頭痛、発疹など、インフルエンザでもみられるような症状があります。また、吐血や歯肉からの出血、消化管からの出血が約70%の方に見られ、それが致死的になります。さらに下痢や衰弱が見られます。肝臓で原因ウイルスが増えるために、肝臓が大きくなり(肝腫脹)、右の脇の下に痛みを感じます。
■エボラ出血熱の診断・検査
血液検査では、白血球や血小板の数が減少します。エボラ出血熱の診断には、ウイルスの遺伝子を検出する遺伝子増幅検査(PCR)、ウイルスの一部を検出する抗原検査、免疫反応を検出する抗体検査が必要になります。日本では、国立感染症研究所でないと検査が難しい状況です。まずは、渡航歴を知った上で、疑うことから検査になります。
■エボラ出血熱の治療・致死率
現時点ではウイルスに対する治療はありません。発熱などの症状と出血症状に対する治療になります。さらに、ワクチンもありません。
死亡する率(致死率)は非常に高く、25%~90%。2014年に西アフリカのギニアで発生したエボラ出血熱は、2014年3月25日現在で、86人が発症し、59人が死亡しています。隣国のリベリアにも感染者の報告が見られています。
ワクチンも治療方法もありませんので、予防が大切です。現在の感染経路は、血液および接触感染で、空気感染はしませんが、飛沫感染の可能性が否定できていません。
まだまだ未知の部分の多いウイルスですが、ウイルスの宿主として、「コウモリ」が考えられています。
海外だけでなく、日本でも死んだ動物には決して近づかないようにしましょう。死んだ動物は、病原性の強いウイルスによって死亡した可能性があり、動物から人への感染が起こる可能性があります。
文・清益 功浩(All About 感染症)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140331-00000007-nallabout-hlth