はじめに
(image by PresenPic)
雷といえば、なんとなく夏のイメージがありませんか?実は、冬にも雷は落ちるんです。しかも、遠くからの雷鳴で危険を察知できる夏の雷と比べて、冬の雷は何かと怖いんです…
「冬季雷」って何?
「冬季雷」とは?
「冬季雷(とうきらい)」とは、その名の通り冬に落ちる雷のことです。雷といえば夏のイメージが強いかもしれませんが、秋田県から鳥取県に至る日本海側を中心に夏季の5分の1程度は落ちているようです。中でも、新潟県から福井県にかけての地域は激雷地区となっています。
そして、一般的なイメージの中の雷は「上から下」へ放電、つまり”落ちる”イメージがありますが、冬季雷の場合は多くが高い構造物から空へ、つまり「下から上」へ放電を始めるという特徴があります。
なぜ冬の雷は珍しい?
雷の生成には積乱雲内の霰(あられ)の粒子が大きな役割を果たすため、雲内の気温が霰が形成される-10℃あたりの時に雷の生成は一番活発になります。
夏の積乱雲は「入道雲」の愛称もつくほど高いイメージがありますよね?実際、最高部は気温が-55℃程度の対流圏にまで到達していて、地上の30℃前後の気温と合わさって雲内に-10℃の環境が存在する可能性は高いです。一方、冬の積乱雲はせいぜい高さ3~4km程度。なので、最高部が対流圏にまで伸びず、雲内が-10℃程度になることは多くありません。
つまり、冬に発生する積乱雲は、雲内の気温が-10℃あたりになることが少なく、雷の生成には適していないのです。このため、冬の落雷はあまりないというわけです。
冬季雷の怖さ
「雷の生成に不向きな雲からの雷なんて、大したこと無いんじゃないの?」と思ってしまうかもしれませんが、それは間違いです。冬に落ちてくる雷には、夏の雷とは違う恐ろしさがあるのです。
音もなく近づいてくる
夏場の雷といえば、遠くからゴロゴロと聞こえる雷の落ちる音や、光ってから雷鳴が轟くまでの時間を利用すれば、雷雲がどのくらい近づいているのかよく分かりますよね。しかし、冬季雷はあろうことか音を立てずに近づいてくるのです。
というのも、冬場の雷雲には、夏場のようにたくさんの雷を放電するだけのパワーがないため、少しだけしか雷を落とせないのです。そのため、何の前触れもなく急に一撃だけ落ちる、ということが起こりやすいのです。
一撃がデカイ
「音もなく近づくのは怖いけど、一発だけなんだから別に怖くないのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれませんね。しかし、冬季雷はその一発が”スゴイ”のです。冬季雷は、夏場に比べて地面からの距離が近い雲から発せられるため、なんと夏の雷のエネルギーに比べて100倍以上のエネルギーを持つことがあるのです。
雷から身を守るには
落雷を受けて死亡する確率は「1,000万人に1人」
警察が出した統計(1994-2003年)によると、日本での落雷による年平均死亡者数は13.8人だそうです。日本の人口はおよそ1億3,000万人なので、落雷を受けて死ぬ確率は「1000万人に1人」より少し多いくらいということになります。
しかし、「落雷が当たって死ぬ確率」なんて出来る限り減らしたいもの。雷注意報が出た場合には、以下で紹介するポイントをしっかり守って安全な行動をとりましょう。
軒先、高い木の下への避難は危険
雷が落ちそうな場合、自分より高いものの近くへ避難することが安全だと思い「軒先」や「木の下」へ隠れることがあるかもしれませんが、それは危険です。というのも、雷(電流)は、物体の中を流れるときに表面の方を多く流れるという性質があるためです。なので、軒先や木の下は、雷が落ちやすい場所の近く且つその中でも一番危険な場所になるということになるのです。
30m以下の建物の場合は、高いものの先端を45度に見上げる範囲が安全と言われています。また、木の場合は枝や葉から最低2m以上離れる必要があります。
ゴム製品は無意味、貴金属は無関係
ゴム人間が雷人間に対しては無敵という演出があるように、なんとなく「ゴム=電気を通さない」というイメージはありませんか?確かに、ゴムは絶縁体なので電気は通しにくいですが、実は落雷の場合にはその定説は崩れてしまいます。
というのも、雷はあまりに強力なので、絶縁体であるはずのゴムにすら電気を流してしまうのです。そのため、ゴム長靴やゴム製の雨ガッパなどを身にまとっていても全く効果はありません。
屋内、もしくは車や電車の中へ
では安全な方法は何かというと、それは屋内や車・電車の中に避難することです。先ほど言ったように雷は物体の表面を流れるものなので、家の中にいれば安全ですし、車や電車に落ちても表面の金属を伝って大地に流れるので、中にいれば安全です。
おわりに
この冬、日本海側へのスキーや旅行を考えている方、雷注意報が出た場合にはラジオや携帯電話でしっかり情報収集しましょうね。