朝晩の冷え込みが深まり、冬の訪れも近い。腕や足などがかゆい、粉をふいたようになる乾燥肌の悩みも、これからが本番となる。記録的な暑さに続き、この冬は平年以上の寒さも予想されるが、肌そのものが持つ保湿能力を大切にして乗り切りたい。(谷口康雄)
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10月中旬に東京で2日連続の真夏日となるなど、記録的な暑さは長く続いた。台風の被害も相次ぐ厳しい気象状況は、心身のストレスとなっている可能性がある。さらに気象庁の観測データによれば、この100年で東京の年間平均湿度が70%台半ばから60%前後と乾燥化も進んでいる。
「水だけ洗顔で、一生美肌!」(小学館)の著書があり、皮膚科をはじめとした女性専門外来「私のクリニック目白」(東京都豊島区)の平田雅子院長は、この季節には乾燥肌など肌のトラブルを抱える人が急増するという。
「この季節は例年、急に肌の状態が悪くなることが多く、今年はその傾向が強いようです。暑さで脱水気味になっている上、エアコンで乾燥も進んでいます。保湿クリームを塗っていても症状が現れやすく、肌のトラブルが一気に出てきます」
そう説明する平田院長に寄せられる症状のほとんどは、かゆみだ。皮膚の最上部は角質(角質層とも)と呼ばれ、平たい角質細胞がレンガのように積み重なって強固なバリアとなっている。乾燥して水分を失うなどして壊れることで起きるが、一時的な肌の不調と看過するのは危険だという。
「腕や足、顔や頭など全身、耳の中にも起こり、かゆみの信号は脳から全身にばらまかれて症状が広がる傾向にあります。かき壊したり放置すれば、じっとしていられない、眠れないなど、自制できないほどになります。唇が乾く、手などに静電気が起こるならば乾燥肌です。ワセリンや軟膏(なんこう)などで常に保湿ケアを心がけましょう。冬場は水分を十分に取らず、脱水傾向にもなっています」
さらに平田院長は、せっけんの使いすぎを改め、肌の保水能力を損なわないようにすべきだと指摘する。
「健康な皮膚は水一滴さえ通過させません。その表面は、毛穴から出た皮脂と汗が混ざった皮脂膜という天然の保湿クリームで守られています。せっけんを使うことでせっかくの潤い成分が失われ、レンガ状の壁にも隙間が生じます」
皮脂膜は熱に弱く、水だけで洗顔し、高温の風呂も避けたいと平田院長。肌は体内を映す鏡であるとし、食事をはじめ適切な生活習慣の必要性も訴える。
順天堂大学浦安病院の須賀康・皮膚科学教授も生活習慣の重要性を指摘し、健全な肌の保湿能力の維持が大切だとする。
「角質は厚さ約0・02ミリで薄いラップのようなものですが、3つの潤い因子を備えています。皮脂膜、角質細胞の隙間を埋める角層細胞間脂質、アミノ酸を主成分とする水溶性物質の天然保湿因子の3つです」
肌のトラブルや病気には老化による因子の低下、体質やアレルギーなど、さまざまな要因があるが、肌の保湿機能が失われて起きる。須賀教授は乾燥肌の対策に3つの保湿剤を挙げ、ワセリン、尿素配合クリーム、ヘパリン類似物質含有軟膏がその代表例だ。
「ワセリンは角層を覆うコーティング剤で、尿素配合クリームは古くなった角層をはがすピーリング剤として働き、新しい角層の構築を促します。この2つが角層の表面のみに作用するのに対し、皮膚科で最もよく処方されるヘパリン類似物質は、角層内部で肌の抱水力を高めることができます」
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