[ カテゴリー:医療 ]

出生前検査 医師の取るべきスタンス

娘は絶賛イヤイヤ期中で、泣く・ぐずる・着替えを嫌がるのは序の口で、食事中に食べ物で遊ぶ、食べ物を床に投げ落とす、などこちらの神経を逆なでするようなことを毎日するようになってきました。保育園では非常にお利口にしているようなので、家では甘えているのだと思って極力ニコニコするようにしているのですが、これが続くのかと思うと正直辛つらいです。一緒にいる時間の大半はとても 愛嬌あいきょうがあって 可愛かわいさ満点なのに、イラッとするときは本当に「子育てって大変」という気持ちになるのが不思議です。これも後からは笑い話になるのでしょうか。

私が今、診療で一番重点的に携わっているのは出生前検査です。妊婦健診もずっと診ていて、出生前検査もさせてもらう妊婦さんもいますが、多くの妊婦さんは別にかかりつけの産科医がいて、出生前検査のためだけに私のところを受診されます。一般的な妊婦健診よりも詳しい赤ちゃんの情報を求めて来られるのですが、かかりつけの産科医の紹介で受診される方もいれば、知らせずに受診される方もいます。自分も産科医ですから、自分が妊婦健診を診ている妊婦さんが内緒で他の医師のところを受診していたらあまり嬉うれしい気持ちはしないと思います。なので、主治医に知らせずに受診された妊婦さんにその訳を尋ねてみることがあります。

主治医と考えが合わずに

一番多いのはインターネットで「胎児ドック」などについて調べて、わざわざ主治医に知らせることもなく受診される方ですが、主治医との間に問題を抱えていることは少ないです。しかし、中には出生前検査についての考え方が主治医と異なり、折り合いをつけるのを諦めて受診される方もよくいらっしゃいます。主治医に「授かった子供がどんな病気を持とうとも、受け入れるのが親としてあるべき姿だ」と言われ、求める検査をしてもらうのは諦めてきた、という方です。

確かに母体保護法で胎児側の理由による人工妊娠中絶は認められていませんから、人工妊娠中絶につながりかねない時期の出生前検査をしないという診療姿勢は筋が通っていると言うこともできます。しかし、「命を選択するなんて嘆かわしい」という考えもありだと思いますが、医師という立場で患者にそれを言ってしまうのは悪しきパターナリズム(父権主義)だと私は思います。子供を産み育てるのは医師ではなく両親ですし、その不安に向き合うのが医療者の責務であって、切り捨てるのはもってのほかだと思います。

医師に限らず、もう子供を産み終わった世代の方は、自分たちの頃はこんなに検査の選択肢もなく生まれたら育てるしかない時代だったかもしれないし、もう子供を産むことがない人はこの件について安全域にいるようなものでしょう。しかし、「高齢出産だと障害児が増える」と不安を煽あおられ、出生前診断についてこれだけ選択肢があり、しかも障害児を持った家庭への公的サポートが乏しいこの時代に、子供を産む夫婦が不安を抱き葛藤するのは当然ではないでしょうか。もちろん、「私は迷いはありません」という妊婦や家族もいるでしょうし、それはそれで素晴らしいと思います。しかし医者の立場からそれを否定するのはおかしいのではないかと思います。

医師の指摘に納得できずに

主治医に内緒で出生前検査に訪れる方でもう一つ多いのが、かかりつけに異常を指摘されたものの説明に納得できず不安になって来院されるというものです。超音波検査などで異常の疑いを示された時に、すんなり説明に納得するのは難しいこともあると思うのですが、ここではいまだに多い「突然赤ちゃんの首の後ろがむくんでいると言われた」という例を問題にしたいと思います。これについては「出生前診断『NT』の問題点」という記事にも書きましたが、不適切な時期に不適切な画像でNT肥厚を突然指摘されて受診される方がやはり多いです。NTは本来事前のカウンセリングの上、厳密に測定されるべきものですが、その存在が医師だけでなく妊婦たちにも非常に広く知れ渡っているため様々な問題事例が起こっています。

個人的には一人の産科医として、後に赤ちゃんの染色体異常が判明した時に、「なんで今まで分からなかったんですか?」「NTは見てなかったんですか?」と責められることは大きなストレスなので、NT肥厚らしきものが見られるかも知れない時に「見つけて説明しておきましたよ」と記録することが重要であるということも分かります。しかし、その後に泣き暮らしている妊婦さんや、インターネットで間違った情報にたどり着いてしまう妊婦さんに日常的に接しているので、事前の説明のない測定や誤った説明はやはり行うべきではないと思います。

もしも明らかに肥厚しているような所見や疑わしい所見が見られた場合は、安易な説明をせずに専門家に紹介してもらいたいと思います。また、妊婦さんの方でもNTについての知識をつけてもらって、妊娠初期の体調が優れない時期に余計な精神的ストレスが加わらないように自衛してほしいと思います。

赤ちゃんの検査は、実は非常にデリケートな問題をはらんでいるということを、妊婦健診では医療側も妊婦も忘れてしまうことがありますが、胎児検査を専門にしている施設がかゆいところに手が届く医療を行えたらなあと思っています。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=86474

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