投資を巡るトラブルが後を絶たない中、金融商品について学ぶ「金融教育」が注目されている。証券会社が開く講座は高齢者を中心に人気を集め、関係者は「投資に関心を持ち、正しい知識を身につけようという人が増えている」と分析する。金融庁も、子供から高齢者まで年代別に習得すべき内容を体系的にまとめた基準づくりに乗り出した。
「投資信託ってどんなもの?」。60〜70代の男女数人がファイナンシャルアドバイザーに次々と質問する。証券大手の野村グループが約10年前から公民館などで開いている証券学習講座だ。昨年度の新規依頼は76件で前年の約3倍。今年度はそれを上回るペースで増えている。「アベノミクスで生活はどう変わる」「金融商品の基礎知識」などのテーマの依頼が多いという。
担当者は「低金利や消費増税への懸念などから、老後の生活資金のために投資を始める人は多い。過去の投資詐欺事件に触れ、うまい話には裏があると注意を促すこともある」と話す。
野村グループは、小学生がゲーム形式で株式投資について学ぶプログラムも開発。参加した東京都大田区の小学5年、荻野聖琉(せいりゅう)君(10)は「世界の出来事が影響して株価が動くところが面白い」と笑顔を見せ、母和喜子さん(37)は「投資は怖いものと遠ざけるより、子供の頃から少しでも知っていた方が将来、損をせず自分を守れるのでは」と話した。
日銀などで構成する金融広報中央委員会が2011年に18歳以上を対象に行った調査では、1カ月の生活費以上の借り入れや資金の運用を経験した人のうち、約半数が金融商品や金融機関の比較をしていなかった。特に高齢者層は、金融商品のリスクに関する設問の正答率が他の年齢層より低かった。
金融教育の重要性が指摘されるようになり、金融庁は昨年11月、有識者や関係省庁などによる「金融経済教育研究会」を設置。今年4月にまとめた報告書では、最低限身につけるべき金融リテラシー(理解力)として▽取引では情報の入手先や契約する業者の信頼性を確認する習慣をつける▽高いリターンを得ようとすれば高いリスクを伴うことの理解−−など15項目を挙げた。
今年6月には研究会と同様のメンバーによる推進会議が設置され、年内をめどに年齢別に教える内容を整理・体系化する。完成後は金融庁のホームページで公表するなどして学校や市民学習の場で活用を促す。金融庁は「特に社会人や高齢者は教育を受ける機会が少ない。普及に向け本格的に取り組みたい」としている。
http://mainichi.jp/select/news/20130914k0000e020168000c2.html