ペット用品が“進化”し続けている。ペットの最期を自宅で看取る在宅ケアが増えているのが理由だ。楽に呼吸ができる在宅用酸素吸入装置や、糞の臭いを長期にシャットアウトする脱臭袋…。急成長するペット市場に目を付けた医療メーカーなどが参入、得意分野で“進化”を後押しする。(服部素子)
■医療メーカーがペット市場に次々参入
6月下旬、大阪市中央区のホテルニューオータニ大阪2階で開かれた動物医療学会の展示会場。フロアに計約50社が出展。ペットの医療器具の数々が並ぶ。
その一つが、肺や心臓疾患を抱えるペットのための在宅用酸素吸入装置。酸素濃縮器専門メーカーのテルコム(本社・横浜市)が開発した「ペット用酸素ハウス」。室内の空気を取り入れ、酸素濃縮器で高濃度酸素を発生させ、それをホースで透明ケージに送り込む仕組み。外気の酸素濃度が約20%なのに対し、ケージ内の酸素濃度は常に約30~38%に維持される。
同社関西エリア代理店の北村慈さん(43)は「電源と空気があれば家庭でも高濃度酸素を作り続けることができる。レンタルの形態ですが年々、利用者は増えています」と説明する。
利用は1日からのレンタル制。料金はケージの大きさで異なるが、基本料金、搬入・搬出費など込みで1カ月間借りると、約3万5千円~5万円。目的は、在宅ターミナルケアが中心で、貸し出し期間は平均1カ月。平成16年の初年度のレンタル台数は、数十台だったが、現在は全国で約1100台稼働中だ。
その他にも会場には、ペット保険、腎臓病などの病気や肥満対策用の療法食、小動物専用の臨床検査薬、犬の白内障手術に使用するレンズなどを扱う企業が出展していた。
■人工肛門の技術を応用、脱臭袋を開発
オストミーバック(人工肛門用の袋)の製造で知られる医療用素材メーカー、クリロン化成(本社・大阪市)が、初の一般向け商品とした開発した防臭袋「BOS」(写真は200枚入り、1837円のボックスタイプ)。
高機能フィルム技術を応用した新素材による厚さ0・02ミリのフィルムが、便臭にバリア効果を発揮。同社の調査では1週間経過後も、8割以上の人が臭いを感じなかったという。
当初は赤ちゃんのおむつ処理や介護需要を見込んだそうだが、同社の開発営業部プロジェクトチーフ、安原綾乃さん(36)は「外出時や家庭での人間の赤ちゃんの使用済みオムツの臭いの悩みを解決したいというのが当初の目的でした。ペットの糞処理への需要もあるだろうとは予想していました」と説明する。5月からホームセンターや百貨店などでも取り扱いが始まっている。
■家計のペット医療費が急増
総務省「家計調査」による「ペット関連の年間支出金額」(2人以上の世帯)の平成7年から21年までの推移をみると、15年間で約1・7倍に。その後も増加傾向にあり平成24年の1世帯あたりの支出金額は1万7073円になっている。
内訳は、ペットフード5907円、動物病院代5546円などで、ペットフード代に動物病院代が迫ってきている。
大阪市淀川区で訪問在宅医療への取り組みも行う「みゅう動物病院」の本田善久院長は、「平成15年に室内飼いと室外飼いのイヌの数が逆転し、そのころから『家族の一員』と考える飼い主さん急速に増えました」と指摘する。「最期の世話を家でしたい」と、飼い主が獣医師に在宅ケアのための訪問診療を求めるようになったという。
本田院長は「病気や高齢で『余命は1、2カ月です』というと、入院をやめて家での看取りを望む飼い主さんもおられます。飼い主とペット双方の精神的不安やストレスを緩和する意味でも今後、ペットの在宅ケアニーズは拡大していくのでは」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20130830502.html